日本は世界有数の地震国。家屋の損壊するような大きな揺れも多い。大規模な震災が起きた時、太陽光発電システムはどのような影響を受け、どのように安全が保たれ、どのように損傷したのか――。今回のシリーズでは、住宅用を中心に太陽光発電のオーナーで構成する、特定非営利活動法人(NPO法人)・太陽光発電所ネットワーク(PV-Net:東京都文京区)による調査結果や提言などを紹介する。

 熊本地震による住宅用太陽光発電システムの被災調査では、3回にわたって現地に入って調査した。

 熊本地震は、比較的浅い地中にある断層が動き、ズレたことで大きな揺れが引き起こされた。震度7の地震に2度も見舞われた益城町は、この断層が横断しており、「活断層直下型」と呼ばれる地震によって、町内の多くの地域において、甚大な被害が生じた。

 地震直後のテレビ中継によって、PV-Netがこれまで調査してきた新潟中越沖地震、東日本大震災では見られなかったような太陽光パネルの被災が確認できていたことにも、関心を持っていた。

 それは、南阿蘇村における、地滑りして倒壊した住宅の屋根から、太陽光パネルがずり落ちていたことだった。

 現地調査は、まず地震から約2週間後の2016年4月27~28日に、2回目として同年6月下旬、3回目は同年12月と、経過を含めて把握した。

 4月27~28日の調査では、被災時の住宅用太陽光発電システムに関する注意点や必要な対応の周知にも取り組んだ。自立運転機能の活用状況も調査対象とした。

 熊本県との事前の打ち合わせでは、同県のエネルギー対策課から、現地の住民に「太陽光発電システムに関する注意書」の配布を依頼され、これも任務の一つに加わった。

 防災科学技術研究所が公開した「熊本地震によって全壊した棟数分布」を参考に、被災が最も激しかった益城町の4地域(木山、宮園、辻の城、安永)を分担して調査した(図1)。

   
図1●震災後の益城町
図1●震災後の益城町
2016年6月に撮影(出所:PV-Net)
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 これら4地域については、事前に太陽光発電システムを設置した住宅の所在地と軒数を把握し、震災後の詳細な状況を把握した。また、大分県では日田市、西原村、南阿蘇村の状況を調べた。