消費者庁は1月28日、住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故などに関する報告書を公開した。

 前回は、この調査報告書から、太陽光パネルとケーブルから火災などが生じた13件の住宅の例を紹介した。ケーブルが発火元と見られる場合、施工不良が原因と推定されることが多い一方、パネルが発火元と見られるケースでは、多くの場合、原因は施工不良ではなく、パネルの不具合と推定されることなどを紹介した。

 太陽光パネルやケーブルが発火元となる火災は、屋根への設置形態によって、屋根材への延焼による被害の度合いが異なることもわかった。火災の被害が大きくなったのは、屋根を構成している部材の一つである「野地板」に延焼した場合で、このような例が7件起きていた。この7件の火災は、すべて太陽光パネルと野地板の間に、鋼板などの不燃材が挟まれていない「鋼板などなし型」で発生していた。

 報告書は、この13件の火災などの事故調査を経て、発火に至るプロセスを推定している。今回はこの内容を紹介する。この推定を基に、火災の起きていない他の稼働中の住宅用太陽光を調査し、実際に発火に至るプロセスの最中にある状況の発電設備も発見した。

 まず、13件の火災などの事故に関して、消防機関、製品評価技術基盤機構(NITE)、製造業者による調査資料を分析し、発火元として推定できる場所を太陽光パネル、ケーブルに分類した。そして、発火などの原因を分析した。

 太陽光パネルについては、稼働中の住宅太陽光を現地調査し、分析した内容が妥当かどうかを検証した。また、野地板への延焼プロセスを検証するための実験を実施した。

 13件の火災などの事故では、太陽光パネルが発火元と推定された事故が5件あった。5件とも、使用年数が7年間以上だった。この例を基に、パネルの発火にいたるプロセスを以下のように推定した(図1)。

図1●推定した発火プロセス
図1●推定した発火プロセス
(出所:消費者庁)
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 第1段階として、はんだによる配線の接続部が高抵抗化する。太陽光パネル内の配線(インターコネクタ、横タブなど)のはんだ接続部が、経年劣化やはんだ強度が不十分といった製造上の問題により電気抵抗が大きくなる。

 第2段階になると、バイパス回路が常時通電する。はんだ接続部の高抵抗化が進んだ結果、安全保護回路であるバイパス回路が常に作動する状態になる。

 第3段階として、バイパス回路が断線する。常時通電した状態が長く続いたバイパス回路が、耐久性能を超えて断線し、安全保護回路としての機能を失った状態になる。

 第4段階では、はんだによる配線の接続部が断線したり、異常に発熱する。バイパス回路が断線すると、まず高抵抗化したはんだ接続部に再び電気が流れ始める。さらに高抵抗化が進むことで、はんだ接続部が断線する。または、断線する前に異常に過熱する。

 このはんだ配線の断線により、断線部にシステム全体の電圧が加わって過電圧となり、アーク(火花)の放電が生じる可能性がある。このようなアーク放電や過熱によって、はんだ接続部を覆っている封止材が発火する可能性がある。

 この発火プロセスの妥当性を検証するために、実際に住宅で使われている製品を対象として、発火プロセスの第1段階から第4段階までのそれぞれの段階に該当する不具合が起きていないか、太陽光パネルの状況を確認した。

 具体的には、太陽光発電所ネットワーク(PV-Net)が提供した情報や、調査委員会によるアンケート調査で得た情報を基に、対象とする太陽光パネルが設置されており、かつ、その使用年数や出力低下の状況などから、11件を選んで現地調査した。