太陽光パネルには、製造時や輸送・設置時、また経年劣化によって、さまざまな不具合が生じる場合がある。こうした不具合や、検知するための手法について、ケミトックス(東京都大田区)が評価サービスを通じて得た事例や知見について紹介している。

 これまで2回にわたって、PID(potential-induced degradation)による出力低下の不具合を紹介した。主に結晶シリコン型太陽光パネルで生じ、特定の条件下において、太陽光パネルに高い電圧がかかり、出力が低下する。太陽光パネル内のセル(発電素子)とアルミ製フレーム間に、電位差が生じることで起きる。高温・高湿、システム電圧などの条件が影響しているとされている。

 日本でもPIDによる出力低下は生じていることが知られている。しかし、第3者が試験し、把握できている例は限られる。一定以上の出力低下が確認された時点で、その太陽光パネルは交換され、パネルメーカーが回収するからである。

 今回は、ケミトックスによる評価で、PIDによる出力低下を確認した結晶シリコン型太陽光パネルの例を紹介する。

 まず、関東の沿岸部にある太陽光発電所に設置されたパネルの例である(図1)。太陽光発電所の出力は1MWで、直流回路のシステム電圧は600Vで構成している。太陽光パネルの出力は245W/枚で、発電開始からの稼働期間は、1年未満だった。

図1●関東沿岸部でのPIDによる出力低下の例
図1●関東沿岸部でのPIDによる出力低下の例
稼働後1年以内の太陽光パネルで生じた(出所:ケミトックス)
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 出力が低下している太陽光パネルの評価を依頼され、まず電流-電圧(I-V)特性を把握した。最大電力点付近から出力が低下している特性が示されるなど(図1左)、PIDによる出力低下が疑われた。

 次に、EL(エレクトロ・ルミネッセンス)検査をすると、発光にばらつきが生じた(図1右上)。これもPIDによる出力低下でみられる現象である。

 PIDによる出力低下かどうかを確認するには、回復試験が有効となる。太陽光パネルに逆バイアスで(PID発生時とは、セルとフレーム間の電位差を逆に)高電圧を印加する。すると、EL検査時の発光具合が回復し、パネルの劣化が回復したことがわかった。これによって、この太陽光パネルの出力低下が、PIDによるものと判明した。

 沿岸部は、海からの湿った空気にさらされるほか、潮風、朝露など、PIDによる出力低下を生じさせやすい環境にある。