出力2MW未満の太陽光発電所では、電気保安管理業務の外部委託が認められている。このため、各地の電気保安協会では、従来の受電設備に加えて、出力2MW未満の太陽光発電所から発電設備・連系設備の保安業務を受託することが増え、太陽光発電所のトラブルの傾向やその対策などの知見が蓄積されつつある。今回のシリーズでは、北海道電気保安協会が経験したトラブルや、その対策などを紹介する。

 今回は、太陽光発電所が原因で発生した、無線通信へのノイズ(雑音)による障害について紹介する。

 釧路地域において、北海道電気保安協会が電気保安管理業務を受託している太陽光発電所で発生した事例である。

 送電線に連系した後、北海道の総合通信局から発電事業者に対して、「パワーコンディショナー(PCS)によるノイズが、漁業用の無線通信に障害を引き起こしている」という指摘が入った。

 PCSが、周囲の無線通信やラジオなどの無線放送に対して、障害を生じるノイズを発生させる場合があることは、広く知られている。太陽光パネルから入力された直流電力を、交流電力に変換する際に生じる。

 今回は、漁業用無線に通信障害が生じた()。漁業用無線は、携帯電話や消防・救急無線といった市民生活で不可欠な役割を担っている無線通信や、船舶用の無線通信などと同じように、重要な無線通信に位置づけられている。例えば、漁業用無線や船舶用無線に障害が生じれば、安全な航行などに支障をきたす恐れがある。

図●漁業用無線に通信障害が生じた
図●漁業用無線に通信障害が生じた
(出所:日経BP)
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 その原因となったため、この釧路地域の太陽光発電所は、すぐに連系を解除された。漁業用無線という、地域の重要な無線通信の障害ということで、厳しい対応がなされたと見られる。

 こうした場合、ノイズの発生に対して、適切な処置を施し、漁業用無線に対する効果の有効性が認められるまで、再び連系することは認められない。今回の例では、再び連系することが認められるまで、約2カ月間を要した。

 問題となったPCSは、国内メーカー製のものだった。一般的に、国内メーカー製のPCSは、こうした無線通信や放送に対して、ノイズによる悪影響を及ぼさないような仕様となっている。

 しかし、設置される環境や、周辺の状況などによって、十分に対策された仕様となっていても、不十分な場合がある。今回の事例も、その一つと言える。

 釧路地域の事例では、PCSにノイズ低減用の部材を追加するといった対処が施され、その効果が確認された結果、売電を再開することが認められた。