火口から5km以上の地域にも噴石

 噴火したのは、阿蘇山を構成する火山の1つである中岳。噴火活動が最も激しく、2~3年おきに噴火を繰り返している。ここ数年では、2015年9月にも大きな噴火があり、噴煙が高さ2000mにまで達し、灰や噴石の排出量は推計4万tとされた。

 今回の噴火では、降灰や降石は50万~60万tに上り、噴火の規模が桁違いだったことを物語る。マグマと地下水が接触して水蒸気になり爆発する「マグマ水蒸気噴火」だったことが排出物を多くした。大量の灰に加え、火口から5km以上離れた地域にまで噴石が飛んだ。火口から約4km以遠には民家や畑、畜産施設などが立地している。

 火口から4km以上のエリアに噴石が飛散したのは、1970年代後半の大噴火以来になる。熊本日日新聞の10月9日付の報道によると、火口から4.3kmの宮地地区一帯には、直径約5cmの噴石が多数飛散し、農業用ガラスハウスの天井ガラス板が100枚以上割れたほか、約8km離れた坂梨地区豆札集落では、直径約5mmの噴石によってトマトなどを栽培するビニールハウス約80棟に穴が開くなどの被害が出た。

 最大規模の噴火が、明け方だったため、噴石が落ちた麓の住宅街では大多数の住人が屋内にいて無事だった。だが、農業用ハウスのガラスやビニールが割れたり、破れたりするなどの物的な被害が相次いだ。表面をガラスで覆っている太陽光パネルも、その1つとなった(図2)。

図2●噴火直後のメガソーラー。パネル全体が火山灰と噴石で覆われた
図2●噴火直後のメガソーラー。パネル全体が火山灰と噴石で覆われた
(出所:三協畜産)
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