「4km離れたら噴石は来ない」が定説

 発電所の初期投資は、トータルで9億円近くになり、毎月の返済額は570万円にもなっている。もともと発電所の用地には残土などがあり造成コストが膨らんだ。加えて国産の高効率パネル「HIT」の採用やソーラーシェアリングのために3mもの高い架台を設置し、部材が割高になった。さらに増設によって過積載にした経緯もある。この上に噴火被害による約1億円の追加投資は、会社経営にとって大きな負担になる。

 甲斐社長は、「阿蘇でも、熊本地震などの地震に関わるものはさまざまな公的な支援がある。また、今回の噴火でも農業への被災には、団体補助などで被害が補填される方向だ。発電という公共性の高い事業にもかかわらず、太陽光設備の噴火被害には全く補償や支援がないのはおかしい」と、やり場のない憤りを吐露する。

 メガソーラーを建設する際、噴火のリスクについても検討し、地域の専門家などにも相談した。その結果、「過去30年間、中岳から4km以上離れた場所に噴石が達したことはない。火山灰の降る可能性は高いが、水で流せば発電量は回復する。噴火は大きなリスクではない」と判断し、中岳から6km離れた地域での建設に踏み切った(図10)。

図10●外輪山から眺めた阿蘇山。中岳からの噴煙が見える
図10●外輪山から眺めた阿蘇山。中岳からの噴煙が見える
(出所:日経BP)
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 だが、36年ぶりの爆発的な噴火で、まさかの降石に見舞われた。「阿蘇市は地震に加えて噴火の被害も大きい。噴火被害に関しても公的な支援制度を作って欲しい」。甲斐社長は12月下旬、阿蘇市長などを通じて、熊本県知事に要望した。だが、いまのところ、それに対する回答はないという。