各地の電気保安協会では、従来の受電設備に加えて、出力2MW未満の太陽光発電所から発電設備・連系設備の保安業務を受託することが増え、太陽光発電所のトラブルの傾向やその対策などの知見が蓄積されつつある。今回のシリーズでは、北海道電気保安協会が経験したトラブルや、その対策などを紹介する。

 太陽光発電所は、工業地帯だけでなく、山林に囲まれた地域など、豊かな自然に囲まれた環境に立地することも多い。鳥や動物にとっては、それまで生息範囲の一部だった場所に建てられることもある。そのため、外周を囲うフェンスを飛び越えたり、かいくぐったり、よじ登って敷地内に入り込むことがある(図1~2)。

図1●積雪地のメガソーラーに残っていた動物の足跡
図1●積雪地のメガソーラーに残っていた動物の足跡
山林に近い場所では、さまざまな動物が敷地内に侵入する(出所:日経BP)
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図2●人間のものより大きな足跡
図2●人間のものより大きな足跡
こちらはメガソーラーの敷地外で撮影(出所:日経BP)
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 太陽光発電所に入り込む動物として、ネズミやヘビ、ネコやサル、イタチやイノシシ、シカなどが知られている。

 九州や本州では、イノシシが敷地内を荒らしまわることで、被害が生じることが少なくない。

 鼻で地面を掘り返し、基礎に近い場所の土がなくなることで、設計通りの耐力を実現できなくなる恐れがあるほか、防草シートを突き破るように土を掘り返し、O&M(運用・保守)の追加負担を余儀なくされているメガソーラー(大規模太陽光発電所)もある(関連コラム)。

 北海道にある太陽光発電所の場合、こうしたイノシシによる被害はない。イノシシは積雪に弱いため、北海道のような積雪地域には、生息していないためである。

 シカの侵入は、本州も含め全国で報告されている。天敵だったオオカミの絶滅と温暖化などによって冬を越しやすくなり、生息数自体が急増していることが背景とも考えられる。ただし、シカがメガソーラーの敷地内に侵入しても、イノシシのようなトラブルを引き起こす例は、あまり聞かない。

 太陽光発電所内に侵入したシカが、太陽光パネルの上に乗ったような足跡が発見された例があるが、ほとんどの場合、フンや足跡が残っているだけである。

 北海道に多く生息する動物として、ヒグマがいる。本州に生息するツキノワグマに比べて大型で、成獣では体長2m、体重200kgを超える場合もある。

 北海道電気保安協会が電気保安管理業務を受託している太陽光発電所においても、発電事業者から、「敷地内に、クマのものと見られる大きな足跡が残っていた」と知らされたことがあるという。

 発電設備への影響は未知な部分があるが、もし敷地内で遭遇し、至近距離まで近づいてしまった場合、襲われて死傷する危険がある。クマ対策としては、鈴やラジオを鳴らして人間が近くにいることを知らせる手法が知られる。