青森県の湖というと景勝地である十和田湖を思い浮かべる人が多い。ただ、実は同県で最も広い湖沼は小川原湖になる。県東部の海岸近くにある汽水湖で、ハゼ、シジミなど豊富な水産資源に恵まれ、周辺には多様な生態系が残っている。

 同湖の周辺には、「MSM」と名付けられた3つの太陽光発電所があり、3サイトで合計出力4.4MWになる(図1)。「MSM-1号機」「同2号機」「同3号機」だ。「MSM」とは、「三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合」の略。青森県三沢市内に本社を置く青建設計、小坂工務店、浪岡電設、田嶋板金工業の4社が2012年8月に設立した。

図1●今年4月に稼働した「MSM‐3号機」
図1●今年4月に稼働した「MSM‐3号機」
(出所:日経BP)
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 同組合は、青森県内にメガソーラーの建設計画が相次ぐ中で、地元企業が太陽光発電設備のO&M(運営・保守)を共同で受注することを目的に発足した。

 4社それぞれの得意分野である建築設計、土木建築、電気工事、金属工事のノウハウを結集、連携し、質の高いメガソーラーの保守に取り組む。県内でのメガソーラーの普及を事業拡大の機会としつつ、地域に雇用を生み出すことを目指している。

 当初、自前のメガソーラーを建設することまでは想定しなかった。だが、東日本大震災の被災地向け補助金の活用や地元の金融機関から融資も可能となり、独自のO&M手法とそれを前提にしたメガソーラー設計を検証する目的で、3サイトの建設に踏み切った。

「人手による雪下ろし」で設置枚数を増やす

 同組合が目指すメガソーラー運営の基本は、「人手をかけるO&M」だ。一般的に太陽光発電所の運営では、「O&Mをいかに省力化するか」がテーマになる。しかし、MSMでは、逆に、ある程度の保守作業を見込み、それ前提に発電設備を設計することで収益を最大化する、という方向性を模索している。

 その考え方がよく表れているのが、パネルの設置角だ。積雪地域では、設置角を30度以上に傾け、雪を滑り落ちやすくするのが一般的。だが、設置角30度にすると架台の影が長くなるため、架台と架台の間隔を広くする必要があり、設置枚数が減ってしまう。

 そこで、MSMでは「人がパネルの雪下ろしをする」ことを前提に、設置角を20度に留め、設置枚数を増やした。MSM-1号機の場合、設置角30度では約1.7MW分のパネルしか設置できないのに対し、20度にすると約2MW分設置できるという(図2)

図2●「人手による雪下ろし」を前提にパネル配置を設計
図2●「人手による雪下ろし」を前提にパネル配置を設計
(出所:三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合)
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 また、国内では設置角20度が一般的になっており、太陽光専用架台の調達では20度の方が安くなるという。「人手で雪下ろししても、トータルで見れば、設置角20度の方が収益向上に有利と判断した」と、MSM監事の小坂仁志・小坂工務店社長は言う。