ミョウガには向かない土地と判明

 そこで、3年目には、県や市の関連部署の指導を受けながら、栽培していった。農業委員会による調査や記録も、より綿密なものになっていったという。

 この結果、やはり土に棲む細菌の影響で、芽を出した後、夏を迎えて高温になると枯れてしまうことを、これらの県や市の関連部署とともに確認した。

 「この土地では、ミョウガの栽培には向かないことがわかった。そこで、ミョウガを栽培していた約2割の場所でも、今後はサカキを栽培することになった」という(図8)。

図8●ミョウガを植えていた区画でもサカキを栽培することに
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図8●ミョウガを植えていた区画でもサカキを栽培することに
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図8●ミョウガを植えていた区画でもサカキを栽培することに
植えたばかりで、3年かけて出荷できるようになる。ミョウガの栽培を止め、不要となった棚などの資材も見える(出所:日経BP)

 この変更に伴って、今秋は約42万円の追加出費を要したという。サカキの苗を新たに購入し、植えた作業の費用となる。

 農家は一般的に、営農する作物以外にも、自家用などの作物を栽培している。中村太陽光発電所の敷地内にも、こうした自家用の作物が見られた。

 例えば、華道だけでなく、一般家庭でも正月の飾りで見られる、赤く小さな丸い実のなる木である。赤い実だけでなく、オレンジ色の実のものも見える(図9)。

図9●自家用の作物の一つ
図9●自家用の作物の一つ
正月の飾りや華道で使われる、赤い実が特徴(出所:日経BP)
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 自家用として使うだけでなく、年末になると、懇意にしている相手に挨拶代わりに贈るのだという。

 PCSの隣では、ミツバチの重箱式の巣箱が3箱、置かれている。これは、蜂蜜業者が仮置きしているものと、自家用という(図10)。

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図10●ミツバチの巣箱
図10●ミツバチの巣箱
別の場所にある畑で、蜂蜜業者向けの菜の花やレンゲを栽培している(出所:日経BP)
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 中村太陽光発電所を運営している農家は、この蜂蜜業者向けに、他の場所にある畑で、菜の花とレンゲを栽培している。春になると、その畑に咲いた菜の花やレンゲの花に向かって、ここからミツバチが飛んで行き、花の蜜を吸って戻ってくる。

 菜の花やレンゲは、高級な蜂蜜を作るのに欠かせない花という。自家用に作ったという蜂蜜は、添加物を一切加えていないだけあって、たいへんな美味だった。

●発電所の概要
名称中村太陽光発電所
所在地熊本市の農地
設置した農地の敷地面積約7870m2
農地転用の申請先熊本市農業委員会
架台の高さ約2.6m
太陽光パネル設置角5度
アレイ内のパネルの前後間隔280mm
アレイ間の前後間隔448mm
太陽光パネル出力899.4kW
パワーコンディショナー(PCS)出力1000kW
設備投資額約3億円
発電事業者熊本市の兼業農家(個人)
EPC(設計・調達・施工)サービス九電工
O&M(運用・保守)九電工
太陽光パネル米サンパワー製(2720枚)
パワーコンディショナー(PCS) 東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(出力500kW機×2台)
工期2014年4~10月
売電開始時期2014年10月
売電価格40円/kWh(税抜き)