熊本市の農作地域の一角に、出力約900kWの営農型の太陽光発電所が立地する(図1)。農地の上に、隙間を空けながら太陽光パネルを設置し、農作物と発電で太陽光を分け合う仕組みで、一般的に「ソーラーシェアリング」とも呼ばれる。

[画像のクリックで拡大表示]
図1●営農型の「中村太陽光発電所」
図1●営農型の「中村太陽光発電所」
熊本市の農作地域に立地(出所:九電工)
[画像のクリックで拡大表示]

 発電事業者は、個人の兼業農家で、夫婦で農作している。その姓から「中村太陽光発電所」と名付けられている。

 中村太陽光発電所が導入した営農型の太陽光発電システムは、一般的な国内の営農型のシステムに比べて、基礎や架台が堅牢そうに見える。20年間の長期にわたる信頼性を実現できる強固さと、トラクターの走行を妨げないといった農作業の効率性の両方を満たしながら、できるだけコストも抑えることを目指した。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、九電工が担当した。同社はO&M(運用・保守)も担っている。

 太陽光パネルは米サンパワー製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 2014年10月に売電を開始し、3年が経過した。2015年夏に「メガソーラー探訪」で掲載して以降の推移を取材した(当時の掲載記事)。

 太陽光発電事業は、1カ月に580万円程度の売電が続き、好調に推移しているという。営農者は、「農業に比べると、肥料を適切に与えたり、病気の予防や対処といった手間が、ほぼかからない事業で、ありがたい」とする。

 これまでの推移から、年間で最も発電量が多いのは、4月や5月という。より日射量の多そうな盛夏の時期よりも、この時期の方が多くなるのは、結晶シリコン型のパネル特有の一定以上の温度上昇時には発電効率が下がる現象が影響している可能性がある。

 ただし、2016年は、変則的に9月が最大発電量を記録した。この年は、別の場所で栽培している米の収穫量も多くなったという。同じ太陽光による産物で、連関しているのではとしている。