初期投資ゼロで遮熱効果

 そこで、同社はA棟の省エネ対策を検討してきた。例えば、折板屋根に遮熱塗料を塗ったり、遮熱シートを張ったりするアイデアのほか、二重折板への改造も候補になった。その結果、5年前に遮熱シートを施工した。1枚の大きさが2m×50cmのシートを、金具で折板屋根の上に敷き詰めた。

 その効果は大きく、夏場の空調によるピーク需要は15kW程度下がったという。しかし、風に煽られることなどで劣化も早く、2~3年でシートを交換しないと、遮熱効果が持続しないことが分かってきた。このまま遮熱シートを継続するかどうか、悩んでいた2017年2月、オリックス北陸支店から提案されたのが屋根上太陽光だった。

 実は、これまでも太陽光パネルによる遮熱効果に着目し、設置を検討したことがあったが、導入コストが高く見送った経緯があった。「オリックスからの提案が『屋根貸し方式』だったため、初期投資ゼロで遮熱効果が得られ、賃料まで入ることから、導入の方向で検討できた」と、山本プロジェクトマネージャは言う。

 オリックスでは、A棟の強度を計算し、ほぼ屋根上全面に950kW分のパネルを設置しても問題ないことが分かった。日本海側など雪の多い地域では、一定の積雪重量も加味する必要がある。A棟の場合、もともと二重折板を想定した躯体構造になっていることもあり、十分な余裕があり、屋根全面にパネルを載せても強度を維持できるという(図4)。

図4●一重折板のA棟は、パネルを設置しても十分な強度を維持
図4●一重折板のA棟は、パネルを設置しても十分な強度を維持
(出所:日経BP)
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 逆に「二重折板」屋根のB棟は、すでに屋根重量が相対的に重く、強度上、太陽光パネルを設置する余裕のないことが分かった。

 こうした評価結果を受け、オリックスとPFUは、A棟での「20年間の屋根借り太陽光発電」に関して契約を交わした。

 オリックス北陸支店の辻秀樹次長は、「屋根借り方式は、20年間、契約どおりに屋根上を借りられるか、というリスクがあるため、持続可能性の高い企業でないと提案できない。地域を代表する有力企業であるPFUは、その点で全く問題なかった」という。