水を抜いても安全に発電

 三井住友建設では、自社製フロートの開発時から、その拡販に必要なものとして、自社で水上メガソーラーを手掛ける方針だった。県による実証実験の施工を担当する中で、県内のため池に関する情報が入りやすくなり、太陽光に適した池を検討しやすくなった。

 香川県にある農業用ため池は、市町村が所有し、その地域の水利組合などが管理している。両者による使用許可や理解を得ることが、水上太陽光開発の第一歩となる。

 同社が水上メガソーラーを開発する上で、重視したのは、まず池の規模が一定以上に大きいことだった。その上で、日当たりが良く、太陽光発電に向くことが条件になる。

 地上設置型と同様、メガソーラーの事業性を高める上で、高圧配電線に連系する場合、連系出力は2MW弱とし、2MWを超えるパネルを設置する「過積載」が望ましい。

 平木尾池のメガソーラーでは、連系出力が1.99MWに対して、太陽光パネルの設置容量は約2.6MWとした。水面のうち、約2万9000m2に9504枚のパネルを浮かべる(図2)。

図2●1万795個のフロートを組み、9504枚のパネルを浮かべた
図2●1万795個のフロートを組み、9504枚のパネルを浮かべた
施工時の様子(出所:日経BP)
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 また、フロートを浮かべる上で、日常的な運用で水位差が大きく変動するため池は、理想的でないという。一般的に農業用ため池は、ダムほど水位差が頻繁に変動しないものの、池ごとに運用に違いがある。修繕などのために、水を抜くこともある。

 平木尾池も、定期的ではないものの、水を抜くことがあるという。

 池から水を抜いた時などに、フロートが池の底についた状態になることを嫌がるメーカーもある。これに対して、三井住友建設の場合、フロートが底についた状態でも、池底と結ぶ係留方法を一時的に変えるだけで、問題なく発電できるという。

 さらに、希少な動植物が生息していた場合の配慮や、周囲に住宅が近い場合に反射光に配慮するといった課題は、地上設置型と同じである。

 農業用ため池としての本来の運用を妨げずに、投資収益性を最大化し、かつ、安全に運用できるかが問われる。

 平木尾池のメガソーラーは、売電単価が32円/kWh(税抜き)で、稼働後は四国電力に売電する予定となっている。

 三井住友建設によると、地上設置型と比べて、水上型は造成が不要なこと、連系のための工事費負担金が少なくてすむ傾向にあること、運用時には草刈り費用が少ないことが利点としている。

 また、一般的に、土地よりも水面の方が、安く借りられる場合が多い。こうしたことから、フロートの費用や施工費が割高になる点を差し引いても、固定価格買取制度(FIT)による20年間の投資収益性は、地上設置型に劣らないという。

 むしろ、地上設置型では、適地が少なくなっていることから、造成費や工事費負担金が膨らむ傾向にあり、今後は水上型の方が、適地が残っている可能性もあるとみている。

 ため池の管理を担っている水利組合などにとっても利点が多い。ため池からの収入がほとんどない中、多くの組合は、池の修繕や管理費用の捻出に苦労している。水面を太陽光発電事業者に賃貸しし、使用料を得る利点は大きい。草刈りなど、管理の一部を太陽光発電事業者が代行する場合もある。

 実際に、平木尾池におけるメガソーラーの開発を始めて以降、三井住友建設には、各地の地方自治体や水利組合から、水上太陽光の開発に対する引き合いが増えてきており、今後も自社で開発する可能性があるという。