香川県には、県内各地に多くのため池が点在している。降水量が比較的少ないため、古くからため池を築き、主に農業用に利用してきた歴史がある。

 県内のため池は、1万4619カ所に達する。日本全国のため池の約7%を占め、兵庫県、広島県に次いで、第3位となっている。県の総面積に対するため池の密度では、全国一という。

 高松市に近い、木田郡三木町にある「平木尾池」も、そうした農業用ため池の一つである。1700年(元禄13年)に築かれた。

 この池の水面を活用した、出力約2.6MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「平木尾池水上太陽光発電所」の稼働が間近に迫っている(図1)。

図1●約2.6MWの水上メガソーラーが稼働間近
図1●約2.6MWの水上メガソーラーが稼働間近
香川県木田郡三木町にある平木尾池(出所:日経BP)
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 発電事業者は三井住友建設で、2017年5月に着工し、11月に売電を開始する予定。すでに発電設備は完工し、現在は使用前自主検査の作業が続いている。

 同社は佐賀県吉野ヶ里町の自社工場(三田川PC工場)内にも、メガソーラーを開発・運営している。こちらは地上設置型で、出力1MWとなる(関連ニュース1)。

 三木町の案件は、自社工場の設備に続くもので、水上型は初めてとなる。太陽光パネルを水上に浮かべる部材「フロート」には、自社製を採用した。

 同社は2015年にフロートを製品化し、国内外で実績を積み重ねてきた。同社にとって、資材の供給という、本業の建設とは異なる事業モデルを展開できることを魅力に感じ、事業化したという。

 ゼネコン(総合建設会社)が太陽光発電分野に取り組む場合、地上設置型のEPC(設計・調達・施工)サービスや土木・造成を担うことが多い。三井住友建設でも、いくつかの実績がある(関連ニュース2同ニュース3)。

 この一方で、建設とは異なる新たな事業モデルも模索しており、その一環として、フロートの製品化を決めた。

 フロートでは、建設資材としての施工性や保守性に対する評価に加え、ゼネコンならではの知見、中でも、エンジニアリングのノウハウ、長期の耐久性や安全性などへの信頼感が強みになっているという(関連コラム)。

 三井住友建設は、フロートを製品化する過程で、香川県農政水産部が県内のため池で実施したフロートに関する実証実験の施工を担当した(関連ニュース4)。このことが、平木尾池におけるメガソーラー開発のきっかけの一つとなった。

 同社製フロートは、国内外の水上太陽光プロジェクトで採用されている。国内では、静岡県湖西市にある養鰻場跡の出力3.678MW(2016年3月完成)を皮切りに、愛知県豊明市の出力1.8MW(2017年3月完成)、香川県の出力1.5MW(2017年6月完成)の案件ほか、開発中の5カ所・合計出力約10MWの水上メガソーラーで採用が決まっている。

 海外では、10カ国以上で合計出力約100MWの採用が決定している。