豪雪地帯でも設備利用率は12.7%

 「東京」と名の付く同社が、八甲田山を望む奥深い山間に太陽光発電所を建設することになったきっかけは、自然体験施設「蒼星の森」だった。約70万m2もの広さを持つ同施設の敷地には、ブナ林が広がる。1990年代に大手商社がリゾート開発を進めたものの、バブル経済が弾けて頓挫した経緯がある。

 実は、東京組の中野渡会長は十和田市出身。開発半ばで売りに出ていた、この土地と森を購入した。ブナ林保全のため、植林や間伐、育成に取り組みつつ、自然体験型の施設として、同社が施工した住宅のオーナーに開放している。それが「蒼星の森」だ(図2)。

図2●「蒼星の森」のレセプションハウス(出所:東京組)
図2●「蒼星の森」のレセプションハウス(出所:東京組)
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 「蒼星の森太陽光発電所」は、この施設の敷地内に建設した。前の土地所有者がリゾート開発の一環で、飛行場を建設するために造成していたエリアだった。

 もともと中野渡会長は、太陽光発電には関心があった。だが、都会の狭い土地に建てる東京組の住宅は、南向きの屋根裏を有効利用するため、屋根が北向きになり、太陽光パネルを置けなかった。そこで、「蒼星の森の造成地で太陽光に挑戦することにした。雪深い地域でも、設計を工夫すれば、発電事業が可能なことを証明したかった」という。

 雪国出身の中野渡会長は、「パネルの設置角を30度以上にして、設置高を十分に確保しておけば、雪は自然に滑り落ち、除雪作業もそれほど負担にならない」と見ていた。実際、2013年9月の運転開始以来、3回の冬を乗り切った(図3)。年間の発電量は平均で約50万kWhに達し、設備利用率は約12.7%で、全国平均の約13%と比べても遜色ない。

図3●一冬に1~2回、パネル下に落ちた雪を重機で除く(出所:東京組)
図3●一冬に1~2回、パネル下に落ちた雪を重機で除く(出所:東京組)
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