袖ケ浦市は、千葉県のほぼ中央に位置し、東京湾に面している。出力約1.3MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「千葉県袖ヶ浦市発電所」は、同市の内陸に位置する(図1)。周囲には、農村地帯が広がっている。

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図1●出力約1.3MWの千葉県袖ヶ浦市発電所
図1●出力約1.3MWの千葉県袖ヶ浦市発電所
隣には牛の牧場が立地(下)(出所:日経BP)
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 同発電所は、多摩川ホールディングスが開発・運営している。同社は、高周波関連などの無線通信部品を手がける多摩川電子(神奈川県綾瀬市)を中軸とする持株会社で、太陽光や小型風力、地熱発電といった再生可能エネルギーにも取り組んでいる。

 桝沢徹社長によると、再エネ発電事業は、一時は危機的な状況に陥っていたという経営を安定させるため、多角化の一環として手がけ始めたという。

 自社グループで開発した太陽光発電所は、そのまま運営し続けている案件と、完成後にグループ外の発電事業者に売却している案件に分かれる(図2)。売却した案件は、低圧配電線に連系した発電所が多いという。

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図2●自社グループで運営するメガソーラー(上)、売却した発電所(下)
図2●自社グループで運営するメガソーラー(上)、売却した発電所(下)
開発した太陽光発電所(出所:多摩川ホールディングス)
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 運営し続けている案件は、袖ケ浦市の出力約1.3MWのほか、山口県下関市の約1.6MW(税抜きの売電価格:40円/kWh、稼働開始:2013年6月)、千葉県館山市の約2.0MW(40円/kWh、2015年2月)、茨城県かすみがうら市の約2.4MW(36円/kWh、2017年3月: 関連ニュース1)、青森県三沢市の合計約10MW(36円/kWh、2017年3月・7月)がある。

 ほぼ完成し、売電開始を控えている北海道登別市の約1.99MW(40円/kWh)、建設中で2018年に売電開始予定となっている、長崎県五島市の福江島に立地する約5.3MW(36円/kWh: 関連ニュース2)が、今後加わる。これらを加えた稼働済み・建設中の自社グループ運営の発電所は8カ所、合計出力17.5MWとなっている。

 青森県三沢市に稼働した合計出力約10MWの案件を除き、基本的に自社グループで設立した特定目的会社(SPC)が運営する形態を採っている。発電設備は、リースを活用して導入していることが多い。

 例えば、館山市の発電所では、稼働時の発表で、売電収入は年間約9500万円、20年間で約18億6000万円を見込み、リコーリースに支払う発電設備のリース料などを差し引いた営業利益として年間約4500万円、20年間で約9億5000万円と試算している( 関連ニュース3)。

 三沢市の案件は、規模が大きいことから、スイスのエトリオン、日立ハイテクノロジーズと共同開発・運営している( 関連ニュース4同ニュース5)。高圧配電線に連系する出力約2.5MWの4区画で構成している。

 SPCには、エトリオン・ジャパン(東京都港区)が50%、多摩川ホールディングスが30%、日立ハイテクノロジーズが10%を出資しており、プロジェクトファイナンスの幹事行は三井住友信託銀行が務める。

 一方、完成後にグループ外の発電事業者に売却した案件は、22カ所・合計出力14.3MWとなっている。

 売却した案件も含めて、自社開発した発電所は、O&M(運用・保守)も手がけることが多い。O&Mは今後、自社グループ以外が開発した発電所まで、広げていく方針という。

 また、太陽光発電については、固定価格買取制度(FIT)の売電単価が比較的低い案件でも、追尾型システムを採用して、面積あたりの発電量を高めることで、一定以上の投資収益性を実現することを模索している。

 追尾型システムを採用することで、今後もIRR(内部収益率)を10%以上、確保できるような太陽光発電所を建設できる可能性があるとしている。

 同様に、小型風力発電や地熱発電の開発を進めるなど、今後も精力的に再エネ発電所を開発していくという。