「環境経営の一環としてのCO2削減が目的」

 NHK技術局開発センター建設施設部専任部長の宮田清和氏は、メガソーラーを建設した理由を「地球環境への配慮が重要な経営課題となる中で、事業活動で発生するCO2削減を目指す必要があったため」と説明する。

 そのために、固定価格買取制度(FIT)を利用して売電収入を得ることはせずに、放送所で自家消費することにした。そもそもNHKは公共放送として、定款上、営利目的による事業活動を行えないことになっている。自家消費することから、発電量についても同放送所のピーク需要に近い2MWに設定したという。

 AMラジオ放送所にメガソーラーを建設するのは日本では初めてのことであり、未知の技術課題を解決する必要があった。「第1にメガソーラーがラジオ放送に与える影響、第2にアンテナがメガソーラーに与える影響を確認する必要があった」(宮田氏)。

 ラジオ放送に与える影響については、太陽光パネルがアンテナに作用してアース電位を上昇させてアンテナ特性が変化したり、基礎の重さでラジアルアースが切れる懸念があった。メガソーラーに与える影響については、強い放送電波によってパワーコンディショナー(PCS)の安定的な運用に支障が出ないか、などが検討課題となった。

小型パネルを設置して各種影響を検証

 そのため同社は、出力2kWの太陽光発電システム(図4)を設置して実際に運用し、さまざまな実験を行い、事前検討を行った。その結果、いずれの影響も問題ないことが確認され、本格施工にとりかかることができたという。

図4●事前検証のために設置された2kW太陽光発電システム
図4●事前検証のために設置された2kW太陽光発電システム
(出所:NHK)
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 施工面で特に課題となったのは、同敷地が元は水田で地盤が軟弱だったことだ。コンクリートによる置き基礎にした場合、沈下する恐れがあるため、軟弱地盤の下にある支持層まで杭を打つことにした。ただ、杭を打ち込むと地中に張り巡らせているラジアルアースの銅線が切断される懸念があった。このため、杭が入る部分をあらかじめ掘り、銅線が出てきたら、いったん迂回する回線を作って接続を確保した後、銅線を切断して杭を打つという作業を一つひとつの杭に対して行った(図5)。

図5●ラジアルアースの迂回工事。杭が入る部分を迂回して結線させたうえで切断
図5●ラジアルアースの迂回工事。杭が入る部分を迂回して結線させたうえで切断
(出所:NHK)
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