送信アンテナの一部となるラジアルアース

 同放送所の敷地は、9万5000坪(約31万m2)と広大である。これほどの面積が必要なのは、中波帯の性質上、効率良く電波を送るためには、平地に高い鉄塔を立てて、地中に「ラジアルアース(地線接地)」よばれる銅線を放射状に広い面積にわたって地中に埋め込む必要があるからだ(図2)。ラジアルアースは電気を逃がす安全対策というよりも、送信アンテナの一部として、電波の放射効率を高める役割を担っている。

図2●ラジアルアース。見学用に一部を露出させたもの
図2●ラジアルアース。見学用に一部を露出させたもの
(出所:日経BP)
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 NHKは外国波の混信を避けるために増力する必要に迫られ、1982年にそれまでの埼玉県川口市(第1放送)と鳩ヶ谷(第2放送)から同地にAMラジオ放送所を建設した。関東甲信越全域に電波を送れる適地で、これだけの広大な面積を確保できたのは久喜市菖蒲町しかなかったという。

 ラジアルアースがある敷地の一部は、野球場やテニスコートが作られているが多くは草むらとなっており、NHKはその有効活用を模索していた。そこで浮上したのが、メガソーラー(大規模太陽光発電所)を建設するアイデアだ。同社は、2008年にメガソーラーの検討を始め、技術課題を解決した後、出力約2MWのメガソーラーを建設、2012年8月から稼働した(図3)。

図3●菖蒲久喜ラジオ放送所に設置された2MWのメガソーラー全景
図3●菖蒲久喜ラジオ放送所に設置された2MWのメガソーラー全景
(出所:NHK)
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