傾斜と岩石で基礎を変更

 基礎の選定では曲折もあった。傾斜の多い場所にメガソーラーを開発する場合、杭基礎が採用されることが多い。コストや工期といった利点のほか、そもそも斜面でコンクリート基礎を形成するのは、平地とは違って難易度が増すからだ。

 一方で、杭基礎を採用するには、重機で地中に打設する必要がある。今回の土地の場合、地中に岩石が多いことから、この打設が難しくなることが想定された。

 そこで、当初は、コンクリート基礎を採用することを検討していた。

 しかし、用地は傾斜している。造成後も、約10度の傾斜が残る。雨が降れば、表土を削り取るように水が流れていくことが想定される。

 土の流出対策として、太陽光パネルの設置区域や法面には、草の種を吹き付けて育成し、地面の保水力を高める措置は取っている(図5)。

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図5●草の吹き付けによる保水力の強化
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図5●草の吹き付けによる保水力の強化
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図5●草の吹き付けによる保水力の強化
太陽光パネル設置区域(上)や法面(下)に実施。左上は吹き付け後に草が生えてきた場所、右上の左側は吹き付け済み、右側は吹き付け前の場所で違いがわかる(出所:日経BP)

 それでも、ある程度、土が流れる可能性はある。想定以上に土が流れた場合でも、より安全に地面に固定できるような基礎を採用した方が良いと考え、基礎を変えることにした。

 最終的に採用したのは、「キャストイン工法」と呼ばれる、杭基礎の周囲をコンクリートで固める手法だった。直径500mm、深さ600mmの穴を掘って、この穴に杭を立てた状態でコンクリートを流し込んで固めた(図6)。

図6●キャストインによる基礎を採用
図6●キャストインによる基礎を採用
直径500mm、深さ600mmの穴を掘って、この穴に杭を立てた状態でコンクリートを流し込んで固める(出所:日経BP)
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 コンクリート製置き基礎からキャストインへの変更に伴い、基礎と架台を総合したコストは、一般的には高くなる。ただ一方で、工期は短くなる。こうした面も総合して、キャストインに変えても、ほぼコストは変わらない計画とし、採用された。

 架台は、リヒテンシュタインのヒルティ製を採用した。九電工は、ヒルティ製の架台を多く採用している。

 計画中に基礎を変える要因となった雨水や、雨水によって削られる表土に関する対策では、吹き付けによる草の育成のほかに、斜面を下った北端に沈砂池も設けている。