想定以上に多かった土

 メガソーラーの用地は、山を北向きに下っている(図2)。多くの場所では、地中に岩石が多い。こうした場所では、岩石を砕きながら造成している。一方、元々谷間に位置し、土を盛って造成する場所もある。

図2●完成後の予想図
図2●完成後の予想図
山を北向きに下る斜面に、7万5144枚の太陽光パネルを並べる(出所:佐賀相知ソーラー)
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 大掛かりな造成となることから、ゴルフ場跡や丘陵地に開発するメガソーラーのように、元の起伏を生かしながら、地面の凹凸に沿うように太陽光パネルを並べる手法は向かないと考えた。北に向けて一定の傾斜で下っていくような斜面を造成し、そこにパネルを並べていくことにした。

 EPCを担う九電工は、林地開発の許認可を含む土木工事関連を、松尾建設(福岡市中央区)に委託した。土木の調査、設計、施工で実績があり、レーザー測量による精度の高い地表面の測量ノウハウも持っている企業と評価している。

 実際の造成の作業は、松尾建設が玉石重機(福岡市南区)に委託している。

 造成による切土と盛土を同量にし、残土を敷地外に排出しない計画とした。切土は傾斜角の調整にも使う。こうした造成で動かす土量は、約10万m3に及ぶという。

 施工中の現地を取材した7月末には、造成工事の終盤を迎えていた(図3)。

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図3●鉱山で見るような大型ダンプなども使い大規模に造成
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図3●鉱山で見るような大型ダンプなども使い大規模に造成
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図3●鉱山で見るような大型ダンプなども使い大規模に造成
岩盤や岩石、ほぼ完成した傾斜面などからも造成の規模が伺える(出所:日経BP)

 大規模な露天掘り鉱山で走っているような大型ダンプや、岩盤の絶壁、砕かれて積み上げられた岩石の山、ほぼ完成したスロープ状の地形など、造成の規模を物語っていた。

 岩の破砕には、発破も使った。「発破」というと、火薬による爆破音の印象があるが、それほど大きな音が出ない方法を採用し、近隣に伝わる音は比較的小さく抑えられたという。

 実は、着工後、造成による発生土が想定以上に多くなった。そこで、土を余らせずに使い切るために、全体の傾斜角の調整を繰り返すことになり、工期が延びたという。本来は、太陽光パネルの配置まで終えている時期だった。

 発生土が増えたのは、地中の岩石に起因するという。掘り出す岩石の状況次第で、掘り出される土量が変わってくる。今回は、掘り出される土の量が、計画より多かった。また、計画の若干の変更によって、掘り出される土の量が増えた面もある。

 想定より多く掘り出された土を使い切るために、元の計画では、例えば、約10.8%の勾配を計画していた場所に、土をより多く盛って約9.05%に変えるなど、再造成した。

 造成が、梅雨の時期まで延びたことも、工期をより遅らせた。雨が降ると地面がぬかるみ、約2日間は造成作業が止まってしまう。

 メガソーラーの開発では、EPCを担当している企業は、施工の進捗状況を定期的に報告する。中でも、複数の企業による共同開発や、金融機関による融資を受けている今回のような案件の場合、より厳しく求められる傾向にある。工程が遅れていれば、遅れを取り戻すための施策などを示す。

 九電工では、基礎以降の工程で、作業員を計画より多く投入し、遅れを取り戻しつつある。こうした機敏な調整が、施工を本業とする企業が事業に参画する強みとしている。

 造成が終わった区域から、基礎工事を行って架台を組み、パネルを設置している(図4)。

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図4●造成の終わった場所から、基礎や架台、太陽光パネルの設置を急ぐ
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図4●造成の終わった場所から、基礎や架台、太陽光パネルの設置を急ぐ
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図4●造成の終わった場所から、基礎や架台、太陽光パネルの設置を急ぐ
計画より作業員を増やして造成の遅れを取りもどす(出所:日経BP)