埼玉県北西部に位置する秩父市は、盛大な夜祭や観音菩薩の札所巡りなど、伝統文化と歴史が息づいている。急峻な秩父山地を擁し、総面積の87%を山林が占めるため、メガーソーラー(大規模太陽光発電所)に適した平地や丘陵は少ない。同市では、再生可能エネルギー推進策として、早くから木質バイオマスなどに取り組んできた。

秩父市が年100円/m2で土地を賃貸し

 そんな険しい山々に囲まれた同市で今年2月末、数少ないメガソーラーが運転を開始した。イタリア系の太陽光発電開発会社であるエルゴ サン ジャパン(Hergo Sun Japan、東京都港区)が建設した「秩父1.0MW太陽光発電所」だ(図1)。

図1●エルゴ サン ジャパンが建設した「秩父1.0MW太陽光発電所」
図1●エルゴ サン ジャパンが建設した「秩父1.0MW太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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 西武秩父駅からクルマで10分ほど、国道140号線を東に折れて急な坂道を上り、住宅地を抜けると、整然と並べられた黒色の太陽光パネルが見えてくる。2万1423m2の事業用地は、もともと「埼玉県農林総合研究センター・秩父試験地」だったが、閉鎖されて遊休地になっていた。パネルを設置したエリアには、主に桑の木が生えていたという。

 事業用地は、県有地(1万1527m2)、市有地(7742m2)、民有地(1793m2)からなる。再エネの普及に取り組む秩父市は、この地にメガソーラーを建設する「秩父市メガソーラー事業」を計画。同市が県有地と民有地を借り、市有地と合わせて、民間のメガソーラー発電事業者に賃貸するというもの。事業用地には、地目が農地だった場所もあり、市が主導してメガソーラー建設を前提に農地転用した。

 2012年に公募プロポーザル方式により、発電事業者を募り、2社の応募のなかから、エルゴ サン ジャパンを選定した。土地の貸付金額は1m2当たり100円となった。