運転手の視線を考慮して柱を配置

 バスの運転手にとって、屋根材や太陽光パネルを支えるための柱は、屋根付き駐車場への出し入れの際に、車体と接触しやすい障害物になる(図10)。運転操作上、心理的な負担が加わることに対して、当初、運転手が不満を抱くのではないかと危惧したという。

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図10●柱は駐車スペースのすぐ隣に
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図10●柱は駐車スペースのすぐ隣に
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図10●柱は駐車スペースのすぐ隣に
バスの運転手たちは、運転操作上の心理的な負担が加わることよりも、予想していた以上に、屋根による作業環境の向上による利点を評価してくれているという(出所:日経BP)

 実際には、「柱との接触リスクという運転操作上の負担よりも、屋根が付くことによる作業環境の改善という利点を、高く評価してくれている」という。この反響は、予想以上だったとしている。

 柱の配置などには、運転手の意見を取り入れて工夫した点がある(図11)。

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図11●運転手の意見を取り入れて柱の配置などを工夫
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図11●運転手の意見を取り入れて柱の配置などを工夫
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図11●運転手の意見を取り入れて柱の配置などを工夫
駐車スペースを示す白線上には重ならないように配置。入庫時の視線に入りやすい位置にトラ柄のマグネットや目印のポールなども設置(出所:日経BP)

 当初は、駐車スペースを示す白線上に、柱を配置する計画だった。しかし、駐車スペースを示す白線と柱の位置は、重ならないように離して配置し、さらに、柱の手前に視認性を高める目印を置いた。

 こうすることで、入庫の際に運転手の視線に入りやすく、より安全・確実に駐車できるという。

 他にも、柱の高さ1mほどの幅に、黄色と黒が交互する「トラ柄」のマグネットを張ったり、柱の周囲にポールを配置するなど、運転手の視線を考えた工夫を施した。

 駐車スペースの手前には、出発時にハンドルを切る位置の目安となる目印も加えた。

 また、屋根は北から南に下っていく構造なので、雨水が下っていく南端の一部には、試験的に雨どいを取り付けている(図12)。雨天時に運転手が屋根の下から歩いて移動する際、集中的に雨水がかからないようにするためだ。

図12●試験的に取り付けた雨どい
図12●試験的に取り付けた雨どい
雨水が下っていく南端に設置(出所:日経BP)
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 今後、注意していく点の一つに、ハトなどのフンを挙げている。鉄道の駅舎のように、屋根の内外にハトが留まるようになってしまうと、フンを落とされてバスの車体が汚れてしまいかねない。

 そこで、さまざまな対策を想定するとともに、それぞれの営業所の従業員に対して、エサを与えるといった、ハトを不用意に呼び寄せる行動は控えるように啓蒙している。

●発電所の概要
設置場所三重交通・四日市営業所
所在地三重県四日市市川島町字目代4102番1
発電事業者三重交通(津市)
連系出力450kW
太陽光パネル出力456.96kW
年間発電量約47万6600kWh(一般家庭約130世帯分の消費電力に相当)
屋根の面積A棟:約1800m2、B棟:約2100m2(各大型バス44台・合計88台分)
太陽光パネルソーラーフロンティア製(出力170W/枚、2688枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(出力450kW機)
投資額約2億円
発電開始日2017年6月7日
売電価格36円/kWh(税抜き)
売電先中部電力