電気主任技術者は楽天信託の社員

 「信託スキーム」では、アドバンテックが楽天信託(旧トランスバリュー信託)にメガソーラーの設備資産を信託する。この仕組みでは、発電事業者は、楽天信託となるが、アドバンテックのバランスシート(貸借対照表)に、発電所設備は資産として計上される。投資額を一括償却できることに加え、SPCを設立する方式に比べ、SPCの収益と出資会社への配当に対する二重課税を回避できるなどの利点がある。

図5●電気主任技術者の古川繁夫さんは、楽天信託の社員でもある(出所:日経BP)
図5●電気主任技術者の古川繁夫さんは、楽天信託の社員でもある(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 実は、電気主任技術者の古川さんは、楽天信託の社員でもある(図5)。発電事業者である楽天信託とクールアースが連携してO&Mを担っている。古川さんは、「メガソーラーの電気主任技術者は、系統連系にかかわる安全面を確保することが業務だが、発電事業者である楽天信託の社員でもあるので、保安とともに発電量の最大化も管理できる」と、現体制の利点を強調する。

 信託スキームの場合、オーナーに太陽光発電の運営ノウハウが乏しい場合など、楽天信託に運営・管理まで委託するケースも多い。ただ、「矢吹町の案件では、アドバンテックに太陽光発電の知識が豊富なことから、楽天信託がO&Mやアセットマネジメントを支援する形になっている」と、楽天信託・プロジェクト管理室の今井博基 課長代理は言う。

 また、私募債の発行による資金調達は、メガソーラー事業に必要な自己資金を減らすことができる利点がある。調達コスト(利息)は、プロジェクトファイナンスによる借入金(負債)より高くなるが、レバレッジ(外部資金を梃子にした事業拡大効果)がさらに高まり自己出資のエクイティIRR(内部収益率)は向上する。

 こうした資金調達手法は、メザニンローンと同様の性格を持ち、昨年あたりからリース会社などが積極的に資金提供するなど、メガソーラー事業での活用が目立ってきた。アドバンテックはそうした動きの先駆けとなった。