宮城県南部の亘理町の沿岸部で、出力約1.455MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)が2017年3月、稼働を始めた(図1)。東日本大震災の津波で被災した地域の土地を活用したもので、宮城県が設置した。

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図1●亘理町の沿岸部に立地
図1●亘理町の沿岸部に立地
出力は約1.455MW。北隣に緊急時の一次避難所を兼ねた展望台がある。下の画像の手前が沿岸側(出所:宮城県)
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 海岸から近く、田畑や住宅が津波にのみ込まれた区域にある。コメやイチゴのほか、さまざまな野菜の栽培が盛んな区域だった。

 しかし、津波による被災後、「居住に適当でないと認められる区域」となり、住宅は内陸に移転し、元の土地は亘理町が買い取った。こうした住宅の移転は、防災集団移転事業と呼ばれ、宮城県では津波で被災した沿岸部の幅広い地域で実施されている。

 移転後の住宅跡地は、点在している。「農山漁村地域復興基盤総合整備事業」を活用する中で、これらの点在している住宅跡地を換地し、まとまった規模の土地に変え、復興に寄与する用途に活用することにした。

 集約した土地は、例えば、防潮堤に隣接する防災緑地や、県道の拡張などに使われた。今回のメガソーラーの用地も、こうしてまとめた土地の一つだった。宮城県が、亘理町から無償で借りた。

 再び田畑として利用する場所は、いち早い復興のため、瓦礫の撤去や、汚泥の剥ぎ取り、除塩などが施された。

 農業用水の復旧や強化も必要だった。沿岸部の稲作地では、土地の高低差が小さいこともあり、元々、農業用水の供給は揚水ポンプの動力に頼ることが多かった。

 震災後は、離農を防ぐ目的でも、農業用水の供給において、よりポンプへの依存が高まることになった。農地を大規模化した上、作業を効率化できるようにする一環として、農業用水の引き込みを効率化するためである。

 地域の耕作地にパイプラインを張り巡らし、それぞれの田んぼで給水栓をひねるだけで、水を張れるインフラを整備した(図2)。

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図2●揚水ポンプと塩ビ管で耕作地にパイプライン
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図2●揚水ポンプと塩ビ管で耕作地にパイプライン
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図2●揚水ポンプと塩ビ管で耕作地にパイプライン
田んぼで給水栓をひねるだけで水を張れる。建屋は揚水ポンプの小屋(出所:日経BP)

 また、震災によって広い地域で地盤沈下したことでも、より多くポンプを活用することになった。