民間の知恵と工夫で運営を効率化

 犬山浄水場を訪れると、企業庁の職員が詰めている建物とは別に、PFI事業による発電・汚泥処理設備を設置した真新しい建屋がある。その背後と正面には、設置角8度で設置した太陽光パネルが、整然と敷かれている。

 正面に設置したパネルの下には、緑の防草シートをほぼ全面に施工した(図8)。ほぼ10年の防草効果を見込んでいるという。導入した脱水装置は、非油圧式の最新型を採用し、油漏れの心配がないという(図9)。加えて、ガス発電機の排熱を脱水の加温に利用することで、運転効率は、従来に比べて20~30%向上するという。

図8●パネル下に防草シートを施工
図8●パネル下に防草シートを施工
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図9●非油圧式の脱水機を導入
図9●非油圧式の脱水機を導入
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 今回のPFI事業では、設備設置コストを20年間に定率で割り振った減価償却費に、一定の保守・管理費用を加えた金額が尾張W&Eに支払われる。メガソーラーの売電収入に関しては、発電事業者である企業庁が受け取り、一定額を差し引いた額が尾張W&Eに還元される仕組みという。

 つまり、汚泥処理と発電事業を効率的に運営し、保守・修繕コストを下げるほど、尾張W&Eの収益性が増すことになる。ここにPFI事業ならでは、民間の知恵や工夫が生かされる余地が出ていくる。設計・施工から同社が提案したことで、効率的な運営にも配慮した設備になっている。今後、こうした設計思想が想定した運用コストを達成できるかも注目される。

●発電設備の概要
発電所名犬山浄水場内の太陽光発電設備(「犬山浄水場始め2浄水場排水処理及び常用発電設備等施設整備・運営事業(PFI事業)」の一部)
住所愛知県犬山市大字犬山字東洞地内(犬山浄水場内)
発電事業者愛知県(企業庁)
土地所有者愛知県
施設面積約18万9000m2(犬山浄水場全体)
太陽光発電設備の容量3.1MW
ガスエンジン発電設備の容量6MW
PFI事業者(SPC=特定目的会社)尾張ウォーター&エナジー(月島機械55%、三菱電機40%、月島テクノメンテサービス5%)
SPC管理・排水処理施設の設計・施工月島機械
発電設備の設計・施工三菱電機
発電設備の保守・修繕三菱電機
太陽光パネル三菱電機製(270W/kW・1万1718枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(500kW機・6台、100kW機・1台)
ガスエンジン発電設備三菱重工業製
PFI事業の運営・維持管理理間2017年4月~2037年3月(20年間)
総事業費約89.5億円(PFI事業全体)
PFI事業の方式BTO方式