標準仕様との合致もプロジェクト買収の条件

 オリックスが開発・運営するメガソーラーでは、自社で当初から開発した案件のほか、今回のように開発中のプロジェクトを購入し、事業化した案件もある。資金力や開発・運営能力を評価され、売り込みを受けることも多い。

 津市のプロジェクトは、日射の良さと規模の大きさに加え、特に、三つの点が魅力だったという。

 一つ目は、敷地内に特別高圧送電線の鉄塔があり、そこで連系できることである(図2)。連系点までの距離が離れている場合に比べ、連系費用が安くあがる。

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図2●敷地内に連系点があった
図2●敷地内に連系点があった
上の画像の中央奥に見える鉄塔が連系点。鉄塔の増強工事は必要となったが、特高案件の中では連系費は比較的安い(出所:日経BP)
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 二つ目は、元の開発企業が土地を取得しており、土地の権利関係がシンプルだったこと。メガソーラーでは、数多くの地権者の取りまとめに時間や労力を要し、着工までに多くの時間を費やすことも多い。

 三つ目は、設計・施工とO&Mをトーエネックが担当することだった。地元で電気設備の施工や運用に実績が多い上、連系先となる中部電力グループであることも利点となる。

 オリックスでは、メガソーラー開発において、事業性のほか、設備などに関する標準的な仕様を定めている。EPCやO&Mに関連するものが多い。「発電さえすればよいのではなく、設備や運営に関し、一定の基準に合致したメガソーラーを作り上げ、運用している」と強調する。

 他社による案件を買い取り、開発を引き継ぐ際には、この標準的な仕様にどこまで合致するのかがポイントの一つとなる。現時点ですべて満たさなくても、開発の過程で許容できる範囲に収められるかどうか、買収交渉時に見極める。

 例えば、EPCサービスや発電設備などに、何らかの制約のある場合、それが許容可能か、許容できないなら、変更可能かどうか、などである。ここは、できるだけ柔軟性の高い方が望ましい。

 津市のメガソーラープロジェクトは、こうした要求を満たす案件だった。オリックスによると、若干の変更はあったものの、ほぼ元の計画を生かして開発を続けた。

 太陽光パネル出力は51.03MW、連系出力は42MWとなる。

 初年度の年間発電量は5781万5692kWhとなり、買取価格は36円/kWh(税抜き)で、中部電力に売電している。

 事業費は、プロジェクトファイナンスによる融資で調達した。調達額や融資元については、非公開とする。

 太陽光パネルは東芝製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 PCSについては、オリックスのメガソーラーでは、TMEIC製の採用が多い。性能や信頼性などを評価しているほか、共通化することで、多くのメガソーラーを運用していく中で、部品の交換などを含む保守を適正化しやすい利点があるとしている。