福島県川内村は、阿武隈高地の中央に位置し、葉タバコや畜産、高原野菜などの複合経営型農業が営まれている。東京電力・福島第一原発から15~30kmほどの距離にあり、東日本大震災後の原発事故を受け、一時、すべての住民が避難した。

 ただ、放射性物質の飛散は、事故時の風向きから、ほかの原発周辺の自治体に比べ相対的に少なく、すでに2012年1月には、村への帰還を呼びかけ、2014年10月には、村の大半で避難指示が解除された。だが、2016年3月までに村に戻って生活している人は64%に留まり、3割以上の村民が帰還していない。

地元ベンチャーがメガソーラーを建設

 2016年3月1日、村のなかでも原発に近い下川内地区の山間で、太陽光発電所「かえるかわうちメガソーラー発電所」の開所式が開催された。出力約2MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)だ。再生可能エネルギー関連のベンチャー企業、エナジア(福島県郡山市)が建設した。同社が村有地4.5haを賃借して20年間、発電事業を行う。

 同発電所は、アカマツ林などで覆われた丘陵に囲まれている。発電所の入り口につながる下り坂の脇には伐採木などが積まれている。その上に登ると、林の向こうに白い建物がかすかに垣間見える。福島第一原発の建屋だ。直線距離では15kmほど先になるという(図1)。

図1●約15km先に東京電力・福島第一原子力発電所がある(出所:エナジア)
図1●約15km先に東京電力・福島第一原子力発電所がある(出所:エナジア)
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