大雨で用地内に滝のような濁流

 北向き斜面への対応と並んで、もう1つ課題となったのが、排水対策だ。灌木や多年雑草を伐採したことで保水力が低下するうえ、急斜面のため、土砂が流れやすい。ゴルフ場跡の場合、もともとある程度の排水対策を講じており、その施設を利用できるが、今回の場合、ほぼゼロから排水施設を設計、施工する必要があった。

 今回の発電所建設は、薩摩川内市の条例によって、「開発行為」の対象となったこともあり、エリア内に複数の調整池を設置するとともに、外周フェンスの内側などにU字溝を設置するなど、当初から、排水対策に力を入れた(図6)(図7)。

図6●複数の調整池を新設した
図6●複数の調整池を新設した
(出所:日経BP)
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図7●フェンスに沿って樹脂製の半割管を施工した
図7●フェンスに沿って樹脂製の半割管を施工した
(出所:日経BP)
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 また、パネル下や周辺にはクローバーの種を播くとともに、新たにできた法面には、クローバーの種を含んだ植栽マットを施工するなど、地表面の緑化による安定化にも取り組んでいる(図8)。

図8●造成した法面には植栽マットを施工
図8●造成した法面には植栽マットを施工
(出所:日経BP)
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 ただ、灌木を伐採後、排水施設の施工中、クローバーが根付く前にも、雨は容赦なく降る。昨年5月の着工後、6~7月に何回か大雨があり、9月には台風が来襲した。パネルの設置は大きく5工区に分け、造成し始めていたが、下側中央に位置する最大面積の緩斜面の区域に向かって、上の工区から水が流れ込む形になった。「大雨の際には、滝のように流れ、そのたびに再造成が必要になったため、予定より土木工事の期間が長くなった」と、juwi(ユーイ)自然電力の兜山博之プロジェクトマネージャーは振り返る。