島根県西部の石見地方は、江戸時代まで「石州」と呼ばれた。良質の粘土が産出し、それを高温で焼成して作る「石州瓦」は、高品質で知られ、北前船で東北や北海道にまで運ばれた。JR山陰本線に乗って江津駅に向かうと、赤い石州瓦を葺いた家々の屋根が目に入る。瓦の産地であるとともに、その積極的な利用が、美しい街並みを演出している(図1)。

図1●江津駅に展示されている「石州瓦」
図1●江津駅に展示されている「石州瓦」
(出所:日経BP)
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 発電所の建設に際しても、瓦の産地である特産を生かしたメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある。石州瓦を製造する丸惣(江津市)の建設・運営する出力約2MWの「丸惣敬川太陽光発電所」だ(図2)。もちろん、パネルの上に瓦屋根があるわけでない。逆にパネルの下、事業用地の一面に、細かく砕いた「廃瓦」を敷き詰めているのだ。

図2●廃瓦を敷いた「丸惣敬川太陽光発電所」
図2●廃瓦を敷いた「丸惣敬川太陽光発電所」
(出所:丸惣)
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 「稼働してまる3年経つが、ほとんど草は生えない。防草効果は予想以上に長く続いている」。丸惣の佐々木賢一社長は、こう話す。事業用地に敷設した廃瓦の砕粒は、同社が製造し、「セラミックサンド」の商品名で販売しているものだ。瓦の製造工程から排出される不良品(規格外品)を、細かく粉砕したものだ。