オオタカの営巣期はチェーンソーを使わず
規模のより大きな清水原発電所は、元々、農地として活用しようと試みられてきたものの、約40年間、有効に活用されなかった土地を用地とした(図3)。面積は約34haに達する。
地権者は27人となる。地権者などが費用を負担して農地を造成し、1974年ころから約5年間、国の実証事業を活用して、野菜が栽培された。
しかし、適切な作物がなかなか見つからなかったことに加えて、降雨などによって整備した土が流出してしまうといった問題が続いたことから、徐々に耕作放棄地が増えていった。
地域にとって、有効活用が望まれていた土地だったことから、メガソーラーの開発にあたり、農業振興地域の整備計画からの除外(農振除外)や農地転用手続きなどは、地域が主導して積極的に進めていったという。
農地転用の手続きは、面積の規模の大きさなどから、大山町の農業委員会だけでは認可が完了できず、国(農林水産大臣)の許可権限の対象となり、手続きに約2年間を要した。
大山隠岐国立公園に該当する場所も含んでいるものの、「普通地域」に区分されている。このため、開発当時は許可が不要で、届け出で済んだ。
また、鳥取県立大山オオタカの森に隣接しているため、オオタカなどの希少種に対する配慮が必要となる。絶滅の恐れのある野生生物に関する情報を記載した「レッドデータブック」に収録されている種では、清水原発電所の北方向全般で、オオタカやクマタカの生息が確認されている(図4)。
そこで、日本野鳥の会と協議し、生息や営巣などに関する調査を続けていくとともに、施工の計画でも配慮しながら開発を進めていった。
日本野鳥の会からは、着工前の約2年間、継続的に野鳥の生態や影響を調査することを求められた。カナディアン・ソーラー・プロジェクトでは、さらに着工中も約1年間、調査を続けた上、運営中も調査を続けていく方針である。日本野鳥の会からは、こうした求められた以上の調査を続けている姿勢などが評価されているとする。
調査結果を基に、できるだけ周辺に配慮した施工計画を立案した。オオタカの営巣期である春から夏にかけては、オオタカが警戒するような、大きな音や振動が生じるような手法の施工を避けた。
例えば、この時期に実施した木の伐採では、チェーンソーの使用を控えた。効率的だが、大きな音と振動を生じやすい手法のためである。手間はかかるが、地中から引き抜いたり、手動でのこぎりを引いて切るといった手法を採用した。
このほか、フェンスを保護色に着色すること、敷地の中央を東西に抜けている県道沿いに植樹することなどを求められ、実施した(図5)。