石川県のほぼ中央に位置する宝達志水(ほうだつしみず)町には、日本で唯一、クルマで砂浜を走れる「千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイ」がある。休日ともなると、オートバイや乗用車、観光バスが列をなし、潮風を切ってドライブを楽しむ。

 波打ち際のドライブウェイの全長は約8km。その半ば地点から内陸に小道を折れ、ゴルフ場を横目に1kmほど進むと、整然と並んだ濃紺の太陽光パネルが目に入る。連系出力約1.99MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「DMMソーラー 宝達発電所」だ(図1)。

図1●「宝達発電所」の全景
図1●「宝達発電所」の全景
(出所:DMM.com)
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北陸なのに架台軒高を50cmに留める

 同発電所を開発・運営するDMM.com(東京都渋谷区、以下DMM)は、DVDなどのネットレンタルや電子書籍、通販などを手掛けるIT企業大手。DMMグループは、金融、ロボットなど、異分野への多角化を進めている。エネルギーもその一環で、メガソーラー開発や電力小売りにも参入した。

 メガソーラー事業は、これまでに全国17カ所に連系出力ベースで約40MWを開発・運営している。北陸では、石川県加賀市にあった自社倉庫の屋根上に設置した「加賀発電所」(連系出力1.45MW)を皮切りに、石川県かほく市の「かほく発電所」(連系出力1.99MW)と「宝達発電所」の3カ所になる。

 「北陸のメガソーラー」というと、豪雪に備えて、設置角を40度まで傾け、地面からパネル最低部までの軒高を1m以上確保する場合も多い。実際、宝達志水町の最深雪は45cm程度になるので、パネル下には1m以上の雪山ができる可能性もある。

 だが、「宝達発電所」の設置角は30度、軒高は50cmに過ぎない(図2)。「北陸と言っても、海岸に近い地域は海風が強いため、内陸に比べ、雪が積もりにくい。そこで、軒高は50cmに留め、仮にアレイから落ちた雪がパネル下まで達しそうになったら、人手で除雪することにした」と、同社エナジー事業 事業開発部の太田誠部長は言う。

図2●設置角30度、軒高は50cmにした
図2●設置角30度、軒高は50cmにした
(出所:日経BP)
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 そのため、地表に敷設したケーブルラックが雪で覆われても、その場所がわかるようにラック上のアレイにピンクひもの目印を付けておくなど、除雪作業の際、重機によって損傷させないよう工夫している。