前回、機器開発の初期段階におけるEMC 設計の勘所について説明した。今回は、それに続く試作段階と、実測評価から規格試験に合格するまでの最終段階で重要となるEMC設計の考え方と具体策のポイントを紹介する。
今回は、電子機器開発の試作段階、および実測評価から規格試験に合格するまでの最終段階におけるEMC設計のポイントを解説する。
試作段階でのEMC設計のポイント
試作段階でのポイントとしては大きく、(1)シミュレーションの確認、(2)定数の合わせ込み、(3)グラウンド接点の見直し、(4)アンテナという考え方からの検討、の4点がある。
まず注意したいのは、(1)波形の確認である。シミュレーションによって想定された波形がある程度正しく反映されているか否かを、実測によって確認する。
次に、(2)定数の合わせ込みである。試作段階では、シグナルインテグリティー(SI:信号品質)についてはほぼ最適化ができていると思われるが、計算上だけでなく実機において検討を行うことは重要だ。これは、(3)接地の見直しについても同様である。
意外に大きな要素となり得るのが、(4)ノイズの“アンテナ”についての再検討である。その1つが接地やケーブルなどの確認と強化対策である。一般に基板上の部品についての検討は入念に行われるが、この段階ではケーブルで接続されている部分などに問題が見つかることが少なくない。
特に機械部品の接点などでは、意図せずにアンテナになってしまう場合がある。スロットアンテナ†やパッチアンテナ†の構造になっていないかを検討する。このような場合、アンテナのイメージを念頭に置いて再検討することで、波形に表れるノイズレベルの意味や原因を理解できるようになる。
アンテナを確実かつ迅速に見いだすためには、スペアナ(スペクトラムアナライザー)モニターの利用が有効である。実測中、アンテナとなっている可能性のある部分に指先を接触させることで、放射の変化が如実に表れる。人体がある程度の抵抗を持った導体であるためにアンテナの効率が低下し、ピークが大きく低下するのである。アンテナとしての作用が特に大きな場合、20dBも低下する場合がある。このような部分に対しては、例えば引き回しを変えてグラウンドへの接地を取ったり、クランプフィルターなどによって電気的な回路長を変えたりするなどの対策により、比較的容易に対応できる。
逆にパワー系、例えばトランスやケーブルなどに触れたときにレベルが上がる部分もある。人体がアンテナになって放射が増大するためだが、これはエネルギー的に大きな放射が起きていることを意味する。これらの箇所はアンテナにもなっているが、信号自体のノイズの周波数が出ている源振の可能性が高く、対策はより難しいといえる。
いずれの場合もアンテナのイメージを持って作業を進めることが重要であり、これにより作業効率や的確性が向上する。