前回までは現場で使うことが多いノイズ対策部品について解説した。今回は、機器開発の初期段階におけるEMC設計の勘所について説明する。
これまでの連載で主なノイズ対策部品の特性を紹介したが、これらはおおむね理想的な状態の使用方法や部品の特性についての解説である。現実には、部品を設置したい場所の周囲に別の回路パターンがあったりする。また、反射やバイパスではノイズをどこに逃がすかなどの課題が出てくる。
これらについて電子機器開発の各段階におけるEMC設計(ノイズ対策)の勘所を順に紹介する。今回は、初期段階である「設計段階」の対策について解説する。
コストと納期への悪影響を抑える
電子機器の開発フェーズは大きく、設計段階、試作段階、最終段階の3つに分けて考えられる(図4)。EMC設計は、電子機器開発の初期の設計段階から検討すべきである。機械部品や基板、主要部品、受動部品などの変更コストが最も低い設計段階で十分な対策が検討されていないと、その後の試作段階や最終段階に進んだときに再設計や評価試験の繰り返しが必要になる。その結果、コストと納期に多大な悪影響を与える。
例えば、最終段階でノイズの問題が現れると、シールド板の追加や磁性吸収シートの貼り付けで対応することになり、コストが増大する。これが初期段階であれば、他の方法が採れるため、コスト増は抑えられる。また、最終段階になってノイズ対策部品を変更しなければならなくなった場合、部品の設置位置を変更したり、部品点数を追加したりする必要が生じる可能性が高い。そうなると、基板を作り直さなければならず、コスト増や納期遅れを招くことになる。設計段階での部品変更なら、こうした問題を回避できる。