日経エレクトロニクス2016年2月号のpp.102-112「フェライトビーズ、3端子フィルター、コモンモードフィルターを使いこなす」を分割転載した後編です。前編はこちら

前回に続いて、実際に用いられるノイズ対策部品について解説する。今回は、コモンモードノイズを選択的に減衰するコモンモードフィルターを取り上げる。

 前回紹介したフェライトビーズや3端子フィルターは、信号とノイズの周波数帯が分離している場合に効果的なノイズ対策部品である。一般にノイズは高周波であるため、高周波帯域でインピーダンスを高めること(ローパスフィルター)で対策できる。

 しかし、連載の第1回でも解説したように、機器の高周波化が進んだことにより信号周波数とノイズ周波数とが重なるケースが増加している。これに対して、問題となるコモンモード成分のみを除去して対策するのがコモンモードフィルター注1)である(図11)。例えば、昨今重要性が増している差動信号では、コモンモードフィルターを使うのが効果的だ。

注1)今回ここで説明するコモンモードフィルターとは、高速差動用のコモンモードフィルターであり、電源ライン用のコモンモードフィルターとは巻き方が違うので注意が必要である。
差動信号=等長で等間隔の2本の電線に対して、片方に元の信号を、他方に位相を反転させた(逆位相の)信号を送る高速伝送の伝送方式。平衡接続とも呼ばれる。平衡関係にある電流の差分を信号として捉えるため、ノイズが相殺されて検出されない特性や、外部への放出も少ないことから耐ノイズ性能が高い。
図11 ビーズや3端子フィルターの限界
図11 ビーズや3端子フィルターの限界
信号とノイズの周波数が重なる場合、信号に影響を与えず問題となるコモンモード成分のみを除去するコモンモードフィルターが有効である。
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