前回に引き続き、実際に用いられるノイズ対策部品について解説する。今回は抵抗成分とインダクタンス成分によってノイズを低減するフェライトビーズ、インダクター(コイル)とコンデンサーを組み合わせた3端子フィルターを取り上げる。
多岐にわたるノイズ対策部品のうち、前回はコイルとコンデンサーについて説明した。今回は、フェライトビーズと3端子フィルターについて解説する。
フェライトビーズとコイル
フェライトビーズは、抵抗成分とインダクタンス成分によってノイズを低減する。最もシンプルなものは、中空のフェライトに導線を貫通させた構造である。信号ラインあるいは電源ラインに設置する。ネックレスなどに使われるビーズ(管玉)に似ていることからこの名で呼ばれる。回路に直列に挿入するだけなので、基板パターン設計後の対策としても効果的であり、小型で汎用性が高いノイズ対策部品である。
インダクタンス成分と抵抗成分を併せ持ち、低周波領域では主にインダクタンス成分が機能してノイズを反射する(図1)。一方、高周波領域では、主に抵抗成分が機能してノイズを吸収する。この機能が切り替わる周波数をR-Xクロスポイント†と呼び、これはフェライトの材質によって大きく異なる。フェライトビーズの特性を決める重要な仕様である。
なお、前回述べたように、コイルも抵抗成分とインダクタンス成分を持っている。故に部品として見たとき、フェライトビーズはコイルとの共通点が多い。しかし、特性面では差異がある。
例えば、フェライトビーズでは広い周波数範囲で、コイルでは特定の周波数で高いインピーダンスを発揮する(図2)。これは、コイルがインダクタンス成分でノイズを反射するのに対して、ビーズは損失の大きい材料を使用し、広い周波数範囲で高いインピーダンスを持たせ、抵抗成分でノイズを熱に変換することに起因する。従って、「反射によるEMI効果が非常に大きいのがコイルであり、フェライトビーズは吸収も積極的に用いてノイズを除去する」と考え、使い分けていくのが合理的だ。
フェライトビーズの中でも特に高周波で有効なQ値の高いものは、コイルに近い特性を持っている。逆に、電源系などでよく用いられるビーズは、抵抗成分が大きい。このような製品による特性の違いを考え、適材適所で設置するのがフェライトビーズによる放射ノイズ対策の合理的な戦略となる。