ルネサス エレクトロニクスの代表取締役社長兼CEOの呉 文精氏に、複数のメディアが2017年12月25日に東京本社でインタビューした。複数の質問とそれに対する答えがあったが、再構成して以下に紹介する。

日経テクノロジーオンラインが撮影。
日経テクノロジーオンラインが撮影。
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 自動運転向けの半導体で、米Intel社や米Qualcomm社、米NVIDIA社などが攻勢をかけている。そのような中で、ルネサスの影は薄いように感じる。改めて、自動運転に対する構え方を聞きたい。

呉氏 現在メディアで目立っている3社と我々では、自動運転、いや車載半導体に対する取り組みに大きな違いがある。まず、我々が車載半導体事業でターゲットにしているのは、メインストリームの量産数が大きいクルマ(以下、量産車)ということだ。量産車がレベル4とかレベル5と言われている完全自動運転車になるのはかなり先のことで、2030年でもそうはなっていないだろう。1000万円、2000万円もする高級車に向けて、自動運転の機能を提供することに我々は興味がない。高級車では大電力を使って機能を提供することは許されるかもしれないが、量産車ではそれはあり得ない。我々は自動運転向けのオープンなプラットフォーム「Renesas autonomy」(関連記事1)をベースに、エコパートナーらと一緒に量産車に向けたADASや自動運転に向けた開発を進めている。

 もう1つ強調しておきたいのは、それら3社はライフサイクルが短いパソコンやモバイル機器向けに非常に少ない品種を開発提供してきた半導体メーカーということだ。車載半導体の寿命は長い。またクルマにはさまざまな半導体が使われる。我々はずっと長いこと車載半導体をやってきた。3社にはない信頼性や幅広い製品扱う力などを持っている。例えば、IntelがイスラエルMobileye社を買収したことでメディアでは随分と騒がれたが(関連記事2)、Mobileyeは単眼のビジョンシステムに特化しており、大きな脅威とは言えない。かなり先のことは分からないが、少し先までの間に車載半導体で3社の後塵を拝するとは考えられない。