ナカニシ自動車産業リサーチ代表アナリストの中西孝樹氏
ナカニシ自動車産業リサーチ代表アナリストの中西孝樹氏
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 ナカニシ自動車産業リサーチ(本社東京)代表アナリストの中西孝樹氏は2017年12月15日、都内でプレスブリーフィングを開催。質疑応答で、電気自動車(EV)に関連する質問に答えた。具体的には、トヨタ自動車のEV化の取り組みや、電池における同社とパナソニックとの提携、EVの進展による部品メーカーへの影響だ。中西氏は「トヨタ自動車はEV対応で遅れていない」と回答した。質疑応答の内容は以下の通り。

「EVは問題ない」というメッセージ

──ここに来て、トヨタ自動車がEVに向けた開発に力を入れてきた。背景に何があると見るか。これまでハイブリッド車(HEV)に傾倒しすぎて、EVへの対応が後手に回った焦りのようなものがあるのか。

中西氏:複合的な要素があると思う。3つの要素だ。第1の要素は、EVの規制がどんどん進み、ぼやっとしていた将来がよりはっきりとしてきたこと。この変化に対し、EVに対する準備を進める時期に来ているとトヨタ自動車が判断していることは間違いない。EVについてあまり準備していなかった時代から、HEVの技術をプラグインHEVやEVへ展開する時期がやって来たと見ているのだろう。トヨタ自動車にとって、これは従来路線通りだ。同社の対応は若干遅れたけれども、EVの技術は仕込んでいる。

 第2の要素は、メディアに対するアピールだ。メディアには「トヨタはEV化で遅れている」「誤算があった」という見方をしているところが多い。だが、トヨタ自動車にしてみれば、それは少し違うのではないかという思いがあるようだ。正しく理解してもらいたいと考えているのだろう。

 「安全と環境は面積で(普及して初めて効果がある)」というのがトヨタ自動車の口癖だ。HEVは台数を増やし、面積を大きくする意味ではとても良い技術である。欧州でもそうだし、中国でも定着してくれれば「CAFE(企業平均燃費)」をクリアする上で非常にアドバンテージがある。従って、(面積が大きくならない)EVについては少しずつ頑張ればよいと考えているという取り組みの意義をちゃんと理解してもらいたい。たとえHEVに賭けて外れたとしても、EVの勉強はしっかりしておくと、トヨタ自動車は考えているのだろう。

 第3の要素は、ステークホルダー(利害関係者)に対する説明だ。やはり、「明日、エンジンがなくなる」と言われたら、部品・材料メーカー(以下、サプライヤー)は動揺する。株主からも不満の声が上がる。こうしたステークホルダーに対する責任を果たさなければならない。だから、トヨタ自動車は「EVは大丈夫」「HEVも問題ない」というメッセージを出しているのだと思う。