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ニュース・トレンド解説

100万人が同時視聴 「DAZN」に見るネット配信の未来

英Perform Group CTOインタビュー(前編)

  • 内田 泰
  • 2017/11/30 05:00
  • 1/2ページ

 2017年シーズンから10年間で総額2100億円――。サッカーJリーグとの巨額の放映権契約の締結で、世間の耳目を一気に集めた英Perform Group(パフォームグループ)。その金額もさることながら、彼らが提供するスポーツ専門のストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」は、ライブで見ることに価値のある“放送コンテンツの聖域”に「OTT(over the top)」と呼ばれるネット配信がついに浸透し始めたことを強く印象付けた。

 それはDAZNのコンテンツのラインナップからも見て取れる。Jリーグ全試合のほか、サッカーでは英プレミアリーグ、スペインのリーガ・エスパニョーラ、ドイツのブンデスリーガ、野球では米メジャーリーグや横浜DeNAベイスターズと広島カープのホームゲーム、さらに米プロアメフトNFLや女子プロテニスなど、人気コンテンツを揃えている。国内のサービス開始は2016年8月だが、NTTドコモとのパートナーシップ契約などにより、会員数は1年で100万人を超えている。

 「ネットのストリーミングで同時に数万人以上が視聴するスポーツイベントのライブ配信は無理」。かつてはこうした否定的な見方も多かったが、それも“今は昔”。一体何が変わったのか。Perform Group CTO(最高技術責任者)のFlorian Diederichsen(フロリアン・ディデリクセン)氏に、スポーツ向けOTTの現在地と未来を聞いた。2回に渡って紹介する。

英Perform Group CTOのFlorian Diederichsen氏。アカマイ・テクノロジーズが2017年11月10日に開催したイベントの講演に登壇した
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――ここ数年で「DAZN」をはじめ、ソフトバンクの「スポナビライブ」などスポーツイベントのライブ配信が急速に普及してきた印象がある。日本でのサービス状況を教えてほしい。

ディデリクセン氏 この業界において当社はいち早く動いており、スポーツのライブ配信をこれだけの規模で展開している企業はほかにない。日本ではこの1年で、7500のスポーツイベントをストリーミング配信し、2200万時間も視聴された。これは時間換算で2500年分に相当する。

――スポーツのライブ配信サービスを大規模に展開するに当たり、技術的に何か大きな進展があったのか。

ディデリクセン氏 最も大きな進展は「ラストワンマイル」、つまり家庭での光ファイバー(FTTH)回線の普及だ。理論上、数百M~1Gbps(ビット/秒)というレベルのビットレートに対応した回線を多くのユーザーが利用できるようになった。加えて、最大6.6Mbpsという比較的低いビットレートでHD品質の映像(H.264でエンコード)をストリーミングできるようになったことも大きい。

 ストリーミングサービスでは、「オリジン」と呼ばれるコンテンツを格納するサーバー(コンテンツサーバー)からインターネットを経由し、コンテンツをキャッシュしたユーザーの最寄りのCDN(Content Delivery Network)注1から配信する。DAZNでは、CDN最大手の米Akamai Technologies社などのサービスを活用している。Akamai社とは約10年前から仕事をしているが、10年前は同社の技術を使ってもエッジ側のキャパシティー、つまりラストワンマイルのビットレートが十分でなかった。

注1:地理的に分散された専用サーバー網を使用してコンテンツを複数の場所にキャッシュし、各ユーザーからのコンテンツリクエストを最寄りのサーバーから処理することでコンテンツの配信を高速化するソリューション

同等品質の映像をより低ビットレートで

――スポーツイベントのライブ配信サービスの実現には、バックボーン(基幹回線)周りなどにも技術革新があったはずだ。技術的な進化について、より具体的に教えてほしい。

ディデリクセン氏 もちろん、ネットワークの中核であるバックボーンの容量改善もあった。バックボーンのスイッチングハブの速度が改善されたことによって、コンテンツサーバーから家庭に向けて安定して映像を送れるようになった。

 我々にとってさらに重要なのは、より多くの人たちがストリーミング配信というサービスを受け入れ始めたことだ。Webブラウザーやスマートテレビ、ゲームコンソールなど、誰でも簡単にストリーミングサービスを使えるさまざまな端末が普及したことによって、家庭で容易にサービスを受けられるようになった。現在、市場で流通している端末の95%に対応している。

 そこでは、特定のソフトウエアをインストールしなくてもOTTを使えるストリーミングプロトコルが普及したことも大きい。弊社の場合、ある地域でサービスを展開しようと計画する際、その地域において62~80%の人がストリーミング再生環境を有していることが、サービス開始の前提条件となる注2。コンテンツサーバーからCDNを介してユーザーに届くまでブロードバンドが確保されたことが大きい。

注2:2017年11月末時点でサービス提供地域は、日本、ドイツ、スイス、オーストリア

――今後に向けた技術課題や改善点はどこか。

ディデリクセン氏 テレビ放送ならアンテナさえあれば受信できてしまう。その点、OTTはもっと複雑だ。コンテンツがエンドユーザーに到達するまでに、データは複数のISP(インターネット・サービス・プロバイダー)を経由するなど多様な経路を通る。さらに、家庭内ではワイヤレス通信のWi-Fiが利用され、家族でも人によって違う端末を使ったりしている。

 こうした状況下で、我々はHDで可能な限り高品質の映像を提供する必要がある。現在のビットレートは最大で6.6Mbpsだが、コーデックを変更することで2018年度は4.8Mbpsで同等品質の映像を配信できるようにする予定だ。

Florian Diederichsen氏。Perform社で技術開発やテクノロジーマネジメントを担当(写真:松本敏明)
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