手前が西川氏で、奥が山内氏
手前が西川氏で、奥が山内氏
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 日産自動車は2017年11月17日、車両の完成検査の不正(以下、検査不正)問題に関して国土交通省に報告書を提出。その後、同社の本社(横浜市)で会見を開き、報告書の内容について日産自動車社長兼最高経営責任者(CEO)の西川廣人氏と同社チーフコンペティティブオフィサー(CCO)の山内康裕氏が説明を行った(図)。会見は報道陣からの質問が途絶えるまで続き、2時間半に渡った。

 報告書の内容は、検査不正に対する実態調査と再発防止策である。西村あさひ法律事務所が行った調査報告書(第三者報告書)を基に、日産自動車が事実調査を行い、原因や背景を分析して、再発防止策を検討した。

 調査の結果、「完成検査員」に認定されていない無資格の作業者(以下、無資格者)が車両の完成検査を実施し、かつ常態化していたのは、日産自動車の(追浜工場、栃木工場、日産自動車九州)と日産車体の2工場(湘南工場、日産車体九州)の5工場だったことが判明した。日産車体の子会社であるオートワークス京都(本社京都府宇治市、旧日産車体京都工場)については検査不正の実態はなかった。

 無資格者は、完成検査員から貸与された印鑑(完検印)を完成検査票に押印していた。複数の工場では、帳簿を使って完検印の貸し出しを管理していた。工長や指導検査員が完成検査員に知らせずに予備の完検印を購入し、無資格者に渡していたケースもあった。検査不正は多くの工場で1990年代には既に常態化していたことが判明した。栃木工場については1979年から検査不正が行われていたという証言があるという。

2回目の立入検査は内部通報から

 日産自動車は、2017年9月18日に国交省の立入検査で検査不正を指摘された後、9月20日までのわずか2日間以内で再発防止策を講じた。ところが、その後に国交省が再び実施した立入検査で、先の5工場の全てで検査不正を続けていたことに加えて、国交省に無届けで完成検査工程を変更した不正が新たに発覚した。

 国交省によるこの2回目の立入検査は、日産自動車の内部通報(内部告発)がきっかけ。この立入検査の際には、無資格者の指導体制を導入した時期について不正確な説明をしたり、関係資料の一部を修正・削除したりするなど隠蔽行為が見られたという。生産現場がこうした行動を見せたのは、「法令に違反していると認識していたからだろう」(山内氏)。

 その他、完成検査員の認定用試験で問題と答案を一緒に配布するなどの不正行為があった。さらに、国交省の定期監査やISO認証のための審査では、検査不正の発覚を逃れるための対応を長年続けていたことが分かった。具体的には、工場や指導検査員が監査当日だけ無資格者を完成検査工程から外したり、係長の指示で監査期間中だけ無資格者に完成検査員であることを示すバッジを付けさせたりする対応である。