マイクロLEDは、液晶や有機ELといった、従来のディスプレーの概念を大きく変える技術である。既に広く普及しているLEDそのものが一つひとつの画素として動作し、液晶や有機ELをしのぐ性能が得られる。マイクロLEDが普及すれば、ディスプレーのサプライチェーンは一変するだろう。「ディスプレーの破壊的技術」と呼ばれる理由の1つである。マイクロLEDの用途は、まずはAR/VR端末が見込まれている。さらには、直視型のスマートウオッチやスマートフォンから大画面テレビまで幅広い応用も期待されている。

 火付け役となったのは、ソニーの大画面・高精細LEDディスプレーだ。2012年に発表した「Crystal LED Display」と、2016年に製品化した「CLEDIS」である。また、1年ほど前から、米Apple社がスマートウオッチに、フレキシブル有機ELに代えてマイクロLEDを採用するのではないかと取りざたされている。2018年には台湾や韓国の企業や研究所からマイクロLEDを用いた試作品が発表されるという情報も飛び交っており、今後の進展から目が離せない。

 しかし、その製造技術には、まだ課題が多い。LEDウエハー上での超小型LEDチップの作製から、LEDチップの転写技術、ディスプレー基板上への組み立て技術まで、多くの企業が開発に取り組み始めており、学会での議論も高まりつつあるところだ。

 マイクロLEDの開発企業は、ベンチャーが多い。この技術を量産化するためには、開発資金が必要である。一方、大手のIT企業が、将来の新しいディスプレー技術だとにらんで、マイクロLED企業と提携する動きが活発化している。代表的なのは、先述のApple社、米Google社、米Oculus社である。今後もこのような動きが活発化するだろう。