米Tesla社CEOのイーロン・マスク氏が進める「2025年有人火星飛行・移住計画」や米Amazon.com社CEOのジェフ・ベゾス氏が提供しようとする低価格の宇宙旅行――米国を中心に、新興企業が宇宙ビジネスを目指し、新規の開発を続けている。当初こそ“IT長者の娯楽ではないか”などという懐疑的なまなざしがあったものの、今や疑いの余地はない。彼らは宇宙ビジネスにまつわるカネの流れを着実に捉えようとしているのだ。

 こうした民間による積極的な宇宙投資が進む中、日本では2018年3月3日に各国の閣僚級会合をメインとした「国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)」が開催される。改めて国際協力の重要性を共有し、政府レベルでの対話・意見交換を行うだけでなく、併せて日本国内企業による宇宙産業・ビジネスの拡大を図ろうとしている。

 なぜ今、宇宙ビジネスなのか、宇宙ビジネスはどのようなカネの流れを生み出すのか、日本企業が入り込む余地はあるのか――本コラムではこうした宇宙ビジネスに関する素朴な疑問に関して、宇宙産業に関する調査を行うベイカレント・コンサルティングのコンサルティング本部 マネージャー堀口真吾氏に解説してもらう。

 宇宙産業といえば、国家最大規模の公共事業――そんな概念が次々と打ち砕かれている。震源地は米国だ。米SpaceX社、米BlueOrigin社、英SKYLON社などは、宇宙輸送システムの再利用によって宇宙ロケットの打ち上げコスト削減を実現した。さらに米Lockheed Martin社は、2028年までに火星軌道に宇宙ステーション「Mars Base Camp」を整備すると発表。加えて2018年3月末を期限とする、探査技術・スピードを競う月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」の開催が予定されている。これら宇宙インフラと呼ばれる産業が活発化することで、火星移住計画や宇宙旅行など、新サービスが続々と創出され始めているのだ。

図1 宇宙産業の現状
図1 宇宙産業の現状
(図:各種資料よりベイカレント・コンサルティングが作成)
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 民間企業による宇宙開発事業のスピードはすさまじい。例えば、SpaceX社やオランダMarsOne社は2025年に有人火星飛行や火星移住計画を予定している。もし計画通りに進めば、2030年代に有人火星飛行を目指そうという米政府の計画よりも先行することになる。こうした民間企業の中で特に注目を浴びているのは、Tesla社のイーロン・マスク氏が率いるSpaceX社と、Amazon.com社のジェフ・ベゾス氏が率いるBlueOrigin社だろう。SpaceX社は、2017年3月30日に第1段ロケットの再利用打上げに成功している。

 一方、BlueOrigin社は、2017年10月20日に最大100回の再利用が可能な次世代ロケットエンジン「BE-4」の燃焼試験に成功した。両社は今後、低コストの宇宙ロケット打ち上げ合戦を繰り広げていくと見られる。