神戸製鋼所は2017年11月10日、アルミニウム合金や銅、鉄鋼などの部材の品質データを偽装していた問題について、社内調査に基づく報告書を公表した(図)。国内外の工場や子会社など17拠点で品質データを偽装していたことを明らかにした。年内をめどに社外の弁護士から成る外部調査委員会が報告書をまとめ、最終的な再発防止策を打ち出す。

図◎2017年11月10日に都内で開かれた会見の様子。中央が神戸製鋼所会長兼社長の川崎博也氏
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図◎2017年11月10日に都内で開かれた会見の様子。中央が神戸製鋼所会長兼社長の川崎博也氏

 報告書によると、グループ全体の13拠点で5年以上にわたって偽装が続いていた(表1)。9拠点では、品質データ偽装に関わった従業員が複数の部署にまたがるか、直属の上司から品質データ偽装に関する指示があった(表2)。ずさんな品質管理体制の中で、組織ぐるみの偽装が繰り返されていたことが改めて浮き彫りになった。

表1◎品質データを偽装した拠点の内訳
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表1◎品質データを偽装した拠点の内訳

表2◎各拠点における品質データ偽装に対する関わり方
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表2◎各拠点における品質データ偽装に対する関わり方

独立性重視の体制が偽装の土壌に

 報告書では、複数の部署で長期にわたって品質データ偽装問題が発生していた事態について、「これまで経営が問題として取り上げ、対応できていなかったこと自体が大きな問題だ」と総括。[1]収益評価に偏った経営、[2]バランスを欠いた工場運営、[3]不適切行為を招く不十分な品質管理手続き、[4]契約に定められた仕様の順守に対する意識の低下、[5]不十分な組織体制、という5点が原因だと分析した。

 同日に東京都内で開かれた会見で、同社会長兼社長の川崎博也氏が特に強調したのは、各事業部門の独立性を重視した体制が抱える問題だ。神戸製鋼は事業部門に対して収益重視の評価を推進してきた。同時に品質規定の作成など品質管理の権限なども各事業部門に移譲。その結果、本社の経営部門は、各事業部門で収益が上がっていれば工場で生じている問題を把握しようとしなかった。例えばアルミ・銅事業部門では、本社による品質監査は行われていなかった。