科学技術振興機構(JST)は、2017年8月に改定した「JST国際戦略の概要」の内容を公表した。2017年10月19日に開かれたJST理事長記者説明会で明らかにした。興味深いのは、多国籍間での共同研究が優れた研究成果を上げているとの分析結果が強調されていたこと。様々な文化・価値観を持つ研究者同士の多様な視点・価値判断が研究内容を高めると、分析を踏まえて指摘した。

図1 主要国のTOP10%論文における国際共著の分析結果(出所:JST)
図1 主要国のTOP10%論文における国際共著の分析結果(出所:JST)
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 改定されたJST国際戦略施策では、浜口道成理事長がもともと改革方針として掲げた「濱口プラン」の柱の1つである「国際化のさらなる強化」を一層具体化している。今回改定した国際化のさらなる強化を狙う施策では「オープン化とパラダイム変換、研究開発にかかわる高度人材の育成および流動性促進、世界全体の目標達成への貢献の3つの重点を強化する」と、浜口氏は説明する。その実現に向けた合言葉「100%global」を設けて、意識付けを図っていく構えだ。

「日本は研究の国際化で遅れをとっている」

 今回実行し始めた国際連携強化策の具体的な対応として、既存の推進中のプロジェクトに対して「世界のトップサイエンティスト同士の共同研究、科学技術先進国との戦略的な研究連携、トップクラスの研究者を対象とした国際頭脳循環促進、レクチャーシップなどを通した国際的な研究者育成、ワークショップの開催などの国際的な研究成果発信などの実行を追加予算などで図って行く。これらの施策対応が、日本の大学や公的研究機関などの研究開発力の向上に不可欠と分析したからだ」と浜口氏は解説する。

 これら施策は、日本の大学や公的研究機関での研究の国際化が実質的に遅れをとっているとの反省から産まれている。国際連携強化策で始める具体案の立案にあたっては、文部科学省傘下の科学技術・学術政策研究所 (NISTEP) が実施する調査「科学研究のベンチマーキング」の分析結果を基にしている。世界各国で発表された科学研究論文を各分野で分析、被引用回数が各年に各分野で上位10%に入る論文の数「Top10%論文数」を調べたものだ。

 日本、英国、ドイツ、中国、米国の主要4カ国の「Top10%論文数」を分析、「国内論文」「2カ国間共著論文」「多国間共著論文」がそれぞれに占める割合の変化を調べたところ、英国、ドイツ、中国、米国では「2カ国間共著論文」と「多国間共著論文」が増加していると明らかになった(図1)。逆にいえば、これら科学技術先進国では自国の研究者だけが参加した研究成果の論文数は増えていない。