大学などの研究成果から産まれた知的財産(特許など)を技術移転する事業を担当する関西ティー・エル・オー(関西TLO、京都市、大西晋嗣社長)など有力TLO(Technology Licensing Organization、技術移転機関)の4機関は、他大学などの技術移転人材を育成する技術移転人材育成研修をこのほど始めた。

 今回、技術移転人材育成研修を担当するのは、関西TLO、テクノネットワーク四国(四国TLO、徳島市、兼平重和社長)、東京大学TLO(東京・文京、山本貴史社長)、東北テクノアーチ (仙台市、水田貴信社長)の4機関である。この4TLOは技術移転事業を黒字化するなど、国内で30を超える承認TLOの中でも成功しており、先進TLOと言える。

図 科学技術振興機構が公表した大学等知財基盤強化支援<人的サポート>事業の概念図
図 科学技術振興機構が公表した大学等知財基盤強化支援<人的サポート>事業の概念図
出所:科学技術振興機構
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 今回始まるのは、科学技術振興機構(JST)が知財活用支援事業の中で「大学等知財基盤強化支援<人的サポート>」事業として、今年10月から半年間の予定で実施される新規の技術移転人材育成研修事業である(図)。

 国内各大学は1998年(平成10年)以降に文部科学省・経済産業省の支援を受けて約40のTLOを設立している。しかしその後、技術移転事業の黒字化などに低迷したTLOもあり、一部は承認TLOを返上するなど、大まかには成功したTLOと低迷するTLOに分かれている。17年9月1日現在で承認TLOは35機関、認定TLOが1機関の計36機関に減っている(参照:経済産業省のWebサイト)。

 今回の研修事業は、技術移転事業などに成功している東京大学TLOをはじめとする4TLOが、知的財産マネジメントの一環として技術移転を担う各大学などの中核人材を受け入れ、知的財産マネジメントのノウハウを伝える座学とOJT形式の研修などを実施し、人材育成を行うもの。各大学や他のTLOなどへの知的財産マネジメントの仕組みやシステムの構築の移植を目指す。