「IoTで何かやれ」「工場のダウンタイムを削減するために、機械学習を導入しよう」。上司に言われて仕方なく関連サービスを調べ始めた製造業の保全担当者。しかし、何から手を付けていいのか分からない――。こんな悩みの解消を支援するIoTプラットフォームサービスを、日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)が「CEATEC JAPAN 2017」(2017年10月3~6日、幕張メッセ)で展示した。同事業の狙いと製造業でのIoT導入の勘所について、同社 シニアテクニカルマーケティングマネジャーの岡田一成氏に話を聞いた。

――展示したIoTプラットフォームについて教えてください。

日本ナショナルインスツルメンツ シニアテクニカルマーケティングマネジャーの岡田一成氏。
日本ナショナルインスツルメンツ シニアテクニカルマーケティングマネジャーの岡田一成氏。
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 当社は、製造設備などの稼働状態をセンサーで監視し、機械学習に基づいた予知保全を実現するIoTプラットフォームサービスを企業に提供しています。今回、IoTに基づく予知保全を簡単に導入できる入り口として「機械学習を用いた状態監視リファレンスシステム」を展示しました。このシステムは、多様な種類のセンサーとセンサー収集デバイス、解析ソフトウエアから成り、工作機械の異常検知や製品の不良品判定などに利用できます。

 利用できるセンサーは多岐にわたり、電流・電圧の他に加速度や音声、光、温度、流量などのデータを収集できます。例えば、ファンの回転音をマイクで計測し、正常時と異常時の音の波形の違いを学習して、故障する前に部品を交換するような利用が期待できます(デモ動画はこちら)。異なるセンサーデータを組み合わせて解析することも可能です。

日本NIが展示したのは、ファンやモーターに取り付けたセンサーで機械の稼働状態を高速に学習し、リアルタイムに異常を検知できるシステム。写真奥は加速度計を取り付けたモーター、その手前は工業用マイクでファンの空転音を聞くシステム。ケーブルがつながっている左の装置がデータ収集用デバイスで、A-Dコンバーターと信号処理用のフィルターなどを搭載する。
日本NIが展示したのは、ファンやモーターに取り付けたセンサーで機械の稼働状態を高速に学習し、リアルタイムに異常を検知できるシステム。写真奥は加速度計を取り付けたモーター、その手前は工業用マイクでファンの空転音を聞くシステム。ケーブルがつながっている左の装置がデータ収集用デバイスで、A-Dコンバーターと信号処理用のフィルターなどを搭載する。
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 解析システムは、米National Instruments(NI)社の計測・制御システム開発用ソフトウエア「LabVIEW」上で利用します。機械学習は、品質工学の理論と多変量解析を組み合わせた「マハラノビス・タグチ(MT)法」に基づく技術を用います。MT法は高速なアルゴリズムなので、収集したデータから高速に診断モデルを学習できます。データ収集デバイスと解析用ソフトウエアを合わせて、最低75万円と、提供価格も安価です。CEATECを皮切りにして提供を進めていきます。小さなプロジェクトから試してみることで、IoTを活用した予知保全の感覚をつかんでもらいたいと思います。

様々な種類のセンサーデータに対応する。(図:日本NI 岡田氏)
様々な種類のセンサーデータに対応する。(図:日本NI 岡田氏)
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