東芝メモリは、2017年10月13日、同社の四日市工場で報道関係者向けに会見を開いた。登壇したのは、同社代表取締役社長の成毛康雄氏と、米投資会社Bain Capital Private Equity社日本代表の杉本勇次氏である。Bain Capital社は、東芝メモリを2兆円で取得する買収目的会社Pangea社へ出資しており、東芝メモリとともに、経営に主体的に関わる投資会社となる。

東芝メモリの成毛氏(左)とBain Capital社の杉本氏
東芝メモリの成毛氏(左)とBain Capital社の杉本氏

 両氏が強調したのは、「2018年は(増産しても)緩和できない」と成毛氏が言うほど強い需要が見込めるNANDフラッシュメモリーを継続的に生産し、需要に応えていく姿勢である。そのため、四日市工場敷地内に建設中の第6製造棟「Y6」に続き、少なくとも2つの新製造棟を建設する可能性を示した。

 Y6に続く新製造棟について、東芝メモリは2つの拠点で準備を進めている。1つは、四日市工場の東側(東地区)の北側隣接地。2011年に竣工した第5製造棟「Y5」の北側になる。同社は「まだ取得は済んでいない」(成毛氏)とするが、建設中のY6および、Y5とY6の間に同じく建設中の開発センターの建設工事に伴う残土を積み上げている。地権者とは、買収を前提とした交渉を進めているとみられる。

 もう1つは岩手県北上市にあるジャパンセミコンダクターの岩手事業所(東芝子会社で旧・岩手東芝エレクトロニクス)。敷地北側と北側隣接地となる見込みだ。既に四日市工場以外で初めての製造拠点とすることを決めており、新棟の建設を2018年に始める。災害時におけるBCP(事業継続計画)の観点から製造拠点の分散と、人材の安定的な確保を狙う。2008年に、フラッシュメモリーの製造を四日市と北上の2拠点化する計画を立てていたが、リーマンショックの影響で凍結していた。幻となった計画が、窮地を切り抜ける新体制で復活する。