三菱電機は、同社のFA(Factory Automation)機器のASIC開発手法について、2017年10月13日に新横浜で開催の「Design Solution Forum2017」で講演した。中核となるSoCタイプのASICの開発に、バーチャルプラットフォームを活用することで、開発期間の30%短縮などの成果を出している。
登壇したのは、同社の大橋康裕氏(名古屋製作所開発部ASIC開発センター)である。同氏によれば、三菱電機ではFA機器向けに多数のASICを開発している。最近はFA機器がスマート化して、データ処理量が増大傾向にある。それにつれて、ASICが大規模化/複雑化し、開発期間が長期化したり、性能見積もりの精度不足が課題になってきている。そこで、これらの課題に対応するため、同社では、バーチャルプラットフォーム(以下、VP)を活用することにした。2014年から段階的にASIC開発に適用を始めた。
一般にVPとは、抽象度の高いハードウエアのモデルを言う。三菱電機では、米Mentor, a Siemens Business社のESL(Electronic System Level)ツール「Vista」を導入して、VPの開発や運用を行っている。CPUコアを持つSoCタイプのASIC開発において、ハードウエア設計とは別にVPを作ることで、ソフトウエア検証を従来よりも前倒して始められるため、全体の開発期間の短縮が期待できる。
同氏によれば、VPを導入して、ソフトウエア検証前倒しによる開発期間の短縮という効果があっただけではなく、さらなる効果があったという。VPの開発段階でシステム(仮想ハードウエア+ソフトウエア)の動的検証が行われるため、そこでハードウエアの仕様の不具合が見つかる。従来は、ハードウエアの設計検証中に見つかっていたが、VPの導入によって、それより早く見つかるようになった。
ソフトウエア検証の前倒し実施と、仕様誤り発見の早期化の2つによって、SoCタイプのASIC開発期間は全体で30%短縮したという。