Si IGBTに比べて、インバーターといった電力変換器で生じる電力損失を大幅に削減できるSiC MOSFET。だが、SiC MOSFETの潜在力を引き出す上で、「積年の課題」があった。三菱電機はその解決にメドを付けた。低いオン抵抗と長い「短絡許容時間(短絡時に素子が破壊されるまでの時間)」を両立させる、新しい素子構造を開発したのである(発表資料)。

 SiC MOSFETでは、オン抵抗を小さくすると短絡許容時間が短くなり、短絡許容時間を長くするとオン抵抗が大きくなるというトレードオフの関係がある。三菱電機は新構造でこのトレードオフ関係を改善。例えば短絡許容時間が同等の場合、従来構造のSiC MOSFETに比べて、室温時のオン抵抗を約40%低減できる(図1)。

図1 従来構造と新構造のSiC MOSFETを比較した結果。同じ短絡許容時間ならば、オン抵抗を約40%小さくできる(図:三菱電機、以下同)
図1 従来構造と新構造のSiC MOSFETを比較した結果。同じ短絡許容時間ならば、オン抵抗を約40%小さくできる(図:三菱電機、以下同)
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