今年で17回目となる韓国最大のディスプレー技術の国際会議「International Meeting on Information Display(IMID)」が、2017年8月29~31日の3日間にわたって、韓国・釜山の「BEXCO(Busan Exhibition and Convention Center)」で開催された。2年前の2015年までは毎年大邱(テグ)で開催され、昨年は初めて済州(チェジュ)での開催だった。今年から釜山での開催となり、来年も釜山で開催されると聞いた。今後しばらくは、この会場に落ち着きそうである。

 会場のBEXCOは、韓国を代表する観光地の海雲台(ヘウンデ)ビーチのすぐ近くに位置している。地下鉄2号線と東海線の乗り替え駅に直結しているので、交通の便も良い。日本から釜山までは成田、関西、中部、福岡、札幌の各空港から直行便があり、釜山の金海(キムヘ)国際空港からは空港線(モノレール)と地下鉄を乗り継いで約1時間程度で着く。福岡からだと高速艇ビートルも利用できる。福岡からは200km程度であり、福岡から広島や鹿児島までと同等の距離である。

 釜山港はアジア最大級のハブ港湾として有名だが、若い人たちが憧れる海雲台ビーチや、海の上からの夜景が楽しめる廣安大橋(グワンガンデキョ)がある観光地として認識されているそうである。そういえば筆者が韓国Samsung社に勤めていた頃、筆者の通訳と若い部下の結婚披露宴が(二人とも出身は釜山と全く関係ないのだが)新婦の選んだ海雲台のホテルであり、部下たちと往復8時間かけて会社のバスで日帰りした記憶がある。

会場となったBEXCO(Busan Exhibition and Convention Center)
会場となったBEXCO(Busan Exhibition and Convention Center)
第1と第2展示場が連絡通路でつながっており、展示会場としての規模はかなり大きい。
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 国際会議IMIDは、ここ数年、論文数が順調に伸びている。今年の発表論文数は実に731件(招待発表156件、 口頭発表110件、ポスター発表465件)に達し、米国で開催される学会「SID(Society for Information Display)をもしのぐ数となった。韓国以外の国・地域別の論文数では、日本75件、中国67件、台湾46件、米国15件、英国9件、 その他25件となっている。最近は中国からの論文数の伸びが著しい。

 今年はスペシャルセッションとして、下記の5つのセッションが作られた。

(1)Solution Processed OLED
(2)LTPS TFTs for Mobile Display
(3)Quantum Dots
(4)AR/VR
(5)Stretchable/Deformable Materials and Electronics

 このうち、(1)の「Solution Processed OLED」(塗布型有機EL)のセッションは、従来の「OLED Devices」(有機EL素子)や「OLED Optics」(有機EL光学)のセッションと並行して開催された。有機EL関連のセッションが並行に行われることは珍しい。それだけ有機EL関連論文の割合が多いのであろう。

 (2)のLTPS(低温多結晶Si)については、一時は酸化物TFTに押されてやや影が薄くなった印象もあったが、フレキシブル有機EL用のバックプレーンとして再び注目されてきている。特にガラス基板と異なるフレキシブル専用プロセスの開発はホットな話題になっている。

 (3)のQuantum Dots(量子ドット)については、有機ELの次に来る未来のディスプレーとして、特に中国で研究熱が高まっている。(5)のStretchable(ストレッチャブル)という単語は今年5月のSID以降、よく聞くようになった。Flexible(フレキシブル)の次の世代を表す用語として定着してきており、ポスターセッションのタイトルにも多く使われていた。いずれも最近のトレンドをうまく捉えたテーマだと思う。

 IMIDは展示会も充実している。以降では、その様子をレポートする。