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ニュース・トレンド解説

震える指で公開ボタンを押したあの日

人類史上最大の眼「アルマ」望遠鏡、30年プロジェクトを追う(後編)

  • 山根 一眞
  • 2017/08/04 05:00
  • 1/5ページ

 真実は、想像より奇なり。

 「これが見えたとは!」と天文学者が泣いた日で紹介した、2014年11月6日に国立天文台が発表した電波望遠鏡「アルマ」がとらえた原始惑星系円盤の画像は、世界を代表する科学誌『サイエンス』や『ネイチャー』の表紙を飾れるほどの成果だったが、日・米・欧の「アルマ」チームは、あえてそれをしなった。

 「アルマ」の日本側のプロジェクト代表者である井口聖さん(国際アルマ計画・アルマ東アジア・プロジェクトマネージャ、国立天文台教授)は、その理由をこう説明した。

 「あの絵一枚、プレス発表しなければ、世界を代表する科学誌『サイエンス』や『ネイチャー』の表紙を飾ったことは間違いない。しかし、我々はそういう科学論文発表をあえて捨てました。アルマの成果や価値はメディアではなかなかとりあげていただけないんですが、今回の成果はきわめて大きなニュースバリューがあるため、『ニューヨークタイムズ』や『BBC』、『CBS』などで大きくとりあげてもらうことを選びました」

 あの、原始惑星系円盤の画像は、科学の分野を超える高い価値があったからなのだ。

 今から9年前の2008年6月6日、私は東京・三鷹市の国立天文台を訪ね、井口さんと立松健一さん(現・国立天文台野辺山宇宙電波観測所長、国立天文台教授)に「アルマ」の進捗状態を取材した。

 その時に渡された資料には、アルマ計画の科学目標が3つ記してあった。

  • 科学目標1:太陽系以外の惑星系とその形成を解明
  • 科学目標2:銀河形成と諸天体の歴史を解明
  • 科学目標3:膨張宇宙史と宇宙物質進化を解明

 これらの目標の達成を可能にするアルマ望遠鏡の3つの特徴として、

  • 高い解像度で天体を細かく観測:ハッブル宇宙望遠鏡の10倍
  • 高い感度で遠くの天体を観測:これまでの電波望遠鏡の100倍
  • 高い分光能力で存在する物質を観測:これまでの相関器の10倍

 と記してあった。

 「ハッブル宇宙望遠鏡の10倍の解像度」というが、ハッブルの見事な宇宙観測画像を思い浮かべ、「ホントかいな?」と思った。

 だが、「科学目標1」の横には、ハッブル宇宙望遠鏡とアルマの観測の想定比較図が印刷されていて、ハッブルの観測画像はただの「点」だが、「アルマ」の観測ではダイナミックな原始太陽と原始惑星系のリングが描かれていた(シミュレーション例だが)。

 とても美しい図なので、これまで「アルマ」を語る時に多く引用されてきた図だが、2014年、まさに、この図を彷彿とさせる実際の観測画像が得られたのである。

2000年に描かれた原始惑星系円盤の想像図、画像:G. Bryden et al. ApJ, 540, 1091 (2000); see also G. Bryden et al. ApJ, 514, 344 (1999)

 立松健一さんも自らのウェブで、2014年11月の「アルマ」の画像と、惑星系形成の理論シミュレーション図を並べて、

 アルマ望遠鏡の建設前に我々が目指していたもの。真実は、想像より奇なり!

 と記している。

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