という大ニュースが、「アルマ」を描くノンフィクションの取材・執筆の途上に飛び込んできたのだ。「大変だ!」とばかりに、私は国立天文台に駆け込み、林正彦台長を初め「アルマ」の関係者に興奮状態でインタビューして回ったのだった。

 宇宙に浮かぶ地球に生まれた私の体、生命は、宇宙で作られた材料でできている。となれば、「私は、私の材料はどのようにして宇宙で誕生したのか」を知りたい。その答に通じるこの観測画像は、待ちに待っていた「アルマ」の大成果だった。私の「元」は、こういう場所で誕生したのだから。

2012年から100人以上の声を

 2012年と2013年、アンデス山脈の標高5000mの天空の天文台を2度訪ね、「アルマ」の30年にわたるプロジェクトをノンフィクションとしてまとめようと取材・執筆を続けていたが、物語の着地点がみつからず足踏み状態が続いていた。いくら「凄いモノを作ったぞ」と書いても、その成果が書けなければ読者は納得してくれない……。

 だが、これではずみがついた。

 取材に拍車をかけ、天文学者、アンテナなどを製造したメーカー、町工場の凄腕の職人たちなどを100人以上訪ね、長時間インタビューを続け、やっと拙著『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』を書き終えることができたのである。

 天文学や宇宙に関心が薄い方も少なくないと思うが、ギリシア時代から「天文学は最も基本的な教養」とされてきた。重鎮が集まる国際会議後のパーティでの会話では、宇宙や天文を話題にするのがベストだ。パーティーにまで政治やカネの話を持ち込むのはタブーだが、宇宙・天文は人類共通の話題だからだ。宇宙・天文への造詣は、国際人に欠かせぬ教養なのだと聞いたこともある。